勝てる見込みがあるのは、コスパ、インテリアの質、走りの質の3点
販売台数をもって勝ち負けを考えるならば、新型エクストレイルは、RAV4とハリアーには到底及ばないだろう。なぜならば、新型エクストレイルでは、台数拡販を狙うための廉価なガソリンモデルを、日本市場では用意してこない、と思われるからだ。
現在の日産は、キックス、ノート、ノートオーラ、オーラNISMOと、売れ筋であるはずのBセグメントで、ピュアガソリングレードをつくらないというチャレンジを行っている。販売会社の声に押されて、やむなく追加されるものだと考えていたが、現時点は一切設定されていない。
この状況で、新型エクストレイルに、欧州や中国で販売されているVCターボエンジンを積んだピュアガソリン仕様を用意するはずがなく、どんなに新型エクストレイルe-POWERが大ヒットしようとも、販売台数でRAV4やハリアーに勝つことは難しい。
パフォーマンスの面においても、e-POWERターボによる加速フィーリングが、RAV4やハリアーのハイブリッドに対して、特段優れるといった見込みはなく(RAV4ハイブリッドの最大トルクは2.5Lエンジン分が221Nm、フロントモーター分202Nmと、トータル400Nm超えとなる)、RAV4にはプラグインハイブリッドまでも用意されている(RAV4PHVの加速力は国産SUVのなかで驚異的なレベルにある)。
後輪側へ強力な電気モーターが追加されればまた変わってくるだろうが、それもRAV4もやっているし、プラグインハイブリッドについては、新型エクストレイルも、姉妹車であるアウトランダーPHEVのユニット(2.5L直4ガソリンとプラグインハイブリッドユニット)を使うことはできるが、三菱との国内市場での両立を考えると併売する可能性は低く、新型エクストレイルはパフォーマンスにおいても、RAV4やハリアーに敵わない。
ただ、新型エクストレイルにも、RAV4やハリアーに勝てる見込みがあるポイントはある。それは、コストパフォーマンスの高さ、インテリアの質感造りの良さ、そして動的な質感だ。
ピュアガソリンモデルを用意しないとなると、新型での価格上昇は避けられないところではあるが、「お得感」を演出するため、e-POWER最安グレードで300万円をやや切る「魅せ玉」が用意されるのでは、と筆者はみており、そうなると、RAV4が337万円から、ハリアーが358万円からとなるハイブリッドモデルでは、新型エクストレイルのコスパが光ることになる。
インテリアの質感も、コストをかけずして小さな高級車として成功しているノートオーラからのフィードバックは多分にあるだろう。欧米や中国仕向けの新型エクストレイルを写真で見るかぎりだと、相当力が入っているものとみて取れる。
動的質感については、乗ってみないと分からないところではあるが、日産は、国産メーカーの中でも、サウンドコーディネートにもっとも成功しており、新型エクストレイルでも大いに期待できるポイントだ。
昨今のSUVは、ロードノイズがどれも静かで大差がないが、「音の演出」についてはメーカーによって全く違う。新型ノートで加速したときの浮遊感や独特な効果音などの調和が非常に未来感を出しており、その点は、日産にアドバンテージがあると感じている。小さなスイッチの操作音ひとつひとつにまで注意を払い、入念につくり込まれているのならば、顧客の心を掴むことは不可能ではない。新型エクストレイルに乗れる日を楽しみにしている。
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