■20世紀から21世紀の価値観への変革、T.33以降のGMAが生み出すモデルに期待
けれども、その進化の様にゴードン・マーレーは疑問を呈したのだった。曰く、「現代のスーパーカーメーカーは真のドライビングファンを忘れてしまっている」、と。あまりにビジネスライクになったスーパーカーの世界を今一度ドライバーの両手に取り戻そう、本当にドライビングファンなスーパーカーを作ろう、と一念発起した結果がT.50であり、T.33というわけだ。
それゆえ、この2台は1960年代以降に育まれたファン・トゥ・ドライブ精神を最もよく体現したモデルになっているはずであり、この先、これらを凌駕するモデルもまた出てこないに違いない。電動化時代を迎えて、スーパーカーの価値観も変わり、またドライビングファンのあり方も変わっていかざるを得ないからだ。
GMAの2台に飛びついたカスタマーとは、基本的にマクラーレンF1をよく知っている人たちか、これまでのスーパーカーをすべて存分に味わってきたような人たちばかりである。
彼らを満足させるべく、そして自ら作ったマクラーレンF1を超えるべくゴードン・マーレーが持てる経験と知識のすべてを注ぎ込んだマシンだ。だから、その価値は計り知れないとなる。
T.33シリーズの全300台をもって、250LMから続いた20世紀的な「僕らのスーパーカーの時代」は終焉することになる。T.33の後、GMAはまったく違った、新しいコンセプトのモデルを生み出すことだろう。スーパーカーになるとはかぎらないとさえ筆者は思っている。ゴードンの才能はその世界だけに留めておくには惜しすぎるのだ。
もちろん、電動化時代のゴードン流スーパーカーも見てみたい。重いバッテリーを彼はいったい、どう調理するのだろうか?
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