クルマの購入といえば、昔ならディーラークレジットで分割払いが定番。某ロックスターの伝説のように現金一括で買ったというツワモノも少数ながらいるだろうか。
最近ではクルマの入手方法も多様化してきた。ここではスマートフォンの販売にも取り入れられている「残価設定ローン」と、ネットサービスに倣った「サブスクリプション方式」を取り上げ、それぞれの違いやメリット、賢い使い方などを解説する。
※本稿は2022年3月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/AdobeStock、ベストカー編集部 ほか(トップ画像=SRT101@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年4月10日号
■残価設定ローンとサブスクの違いは?
残価設定ローンは、契約時に数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を返済するローンだ。3年後の残価が新車時の45%なら、残りの55%を3年間で返済する。
返済を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安い。そして返済期間満了時に、車両の返却、車両の買い取り、再びローンを組んで返済を続けるという選択ができるタイプが多い。
一方、サブスク(サブスクリプション)は、ローンではなく定額制のカーリースだ。借りて使うから、税金や自賠責保険料は月々の返済額に含まれる。
残価設定ローンも、返済期間満了後に車両を返却するとサブスクに近い使用形態となるが、税金、自賠責保険料、契約期間が3年間を超える時の車検費用はユーザーが別途支払う。維持費を含むか否かが最も大きな違いだ。
■それぞれのメリット・デメリット
残価設定ローンのメリットは、車両の買い取りなどが行えること。買い取り可能なカーリースもあるが、トヨタのKINTOなどを含めたサブスクには、買い取りできないタイプが多い。
基本的にローンは、分割返済した後、車両を自分で所有することを目的にする。そこに返却という選択肢を加えたのが残価設定ローンだ。
その点でサブスクは、借りて使うカーリースだから、返却が基本になる。つまり残価設定ローンは、サブスクに比べて利用する時の自由度が広い。
サブスクは使用後の買い取りなどができない代わりに、税金や自賠責保険料まで含まれた定額制だから、毎月の出費に増減が生じにくい。自動車税の納税通知書が郵送されて慌てて納めたり、車検費用を予め貯金する必要はない。
特に若い人は携帯電話を使い慣れているから、高い金額を支払って商品を買うのではなく、毎月一定額を納めて利用する感覚が強い。
残価設定ローンもこの消費動向に応えたサービスだが、税金や自賠責保険まで使用料金に含まれるサブスクは、その傾向がさらに強い。所有ではなく使用のニーズに応えたことがサブスクのメリットだ。
■残価設定ローンの賢い使い方
残価設定ローンで月々の返済額を抑えるには、残価の高い車種を選ぶ。
例えば3年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)が40%なら、3年間に残りの60%を分割返済するが、残価率が60%なら40%を返せばいい。
最終的に60%の残価を支払い、自分の所有にする場合はメリットが薄れるが、車両を返却するなら返済額を節約できる。
具体例を挙げると、1.5Lノーマルエンジンを搭載するヤリスクロスZの新車価格は221万円だ。同じエンジンを積んだヤリスZは197万1000円で、アルミホイールをオプション装着してヤリスクロスZと条件を合わせると、総額は205万3500円になる。オプション価格を含めても、ヤリスクロスZは、ヤリスZに比べて15万6500円高い。
ところが上記の条件で3年間の残価設定ローン(頭金のない均等払い)を組むと、月々の返済額はヤリスが4万4000円、ヤリスクロスは4万100円だから3900円安くなる。
3年後の残価率がヤリスクロスZは新車価格の52%、アルミホイールをオプション装着したヤリスZは39%と大幅に下がるから、ヤリスクロスは新車価格が15万6500円高いのに、月々の返済額は3900円安くなるという逆転現象が起こる。
このように残価設定ローンを使う時は、残価率の高い人気車を選ぶことが大切だ。ちなみにランドクルーザーは人気が際立って高く、3年後の残価率は70%に達する。残りの30%を返済すればいい。
そして残価設定ローンでは、前述のヤリスZのようにオプションパーツを加えると、残価率が下がる。残価設定ローンを利用して、価格のわりに月々の返済額を抑えたいなら、欲しい装備がオプションではなく標準装着された上級グレードを選ぶ。
このように残価設定ローンは、リセールバリューの高い人気車の上級グレードが欲しい人に適する。
また残価設定ローンでは金利に注意したい。ホンダ、スズキ、日産などの販売会社では、決算期や新型車が発売された時など、販売促進を目的に年率1・9〜2・9%の低金利を実施する。車種や期間を限定して行うから、販売会社のホームページを確認したい。