■価格は? 技術の伸び代は? 2Lターボはこれからどうなる?
(TEXT/鈴木直也)
最後に、同じく自動車ジャーナリストの鈴木直也氏に、ダウンサイジングターボが世に出てきた経緯と、2Lターボエンジンのスペックを見る際の区切りとなるポイント、そして今や最激戦カテゴリーとなった2Lターボの今後について、展望を聞いてみた。
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ターボ、それもスポーツターボとなると、最近はどうしても欧州車が優勢だ。
21世紀初頭、クルマの電動化では日本製ハイブリッドが圧倒的にリード。当初ハイブリッドなんて高コストで売れるはずがないと侮っていた欧州勢は、気がついたら燃費競争でハイブリッドに大差をつけられてしまう。
そこで欧州勢が活路を見出したのがダウンサイズターボだ。欧州の走行パターンなら、この判断には一定の合理性があるし、基本がターボだからそこから高性能版を派生させることも容易。
日本製ハイブリッドには「燃費はいいが走りが退屈」という欠点もあって、こちらもけっこうな大勢力となる。
最近は、日本車にもダウンサイズターボが増えてきているし、欧州車はPHEVを主体とするハイブリッド車のラインアップ拡充に一生懸命。お互いに「1周遅れ」ながら、攻守ところを変えて新しい戦いが始まりつつある。
で、今回テーマになっているスポーツエンジンとしての2Lターボだが、前述のような事情があるだけに“タマ数”としては圧倒的に欧州勢の層が厚い。
クラス最強を誇るメルセデスAMGのA45シリーズは、381ps/48.4kgm。ターボに加えてベルト駆動遠心スーパーチャージャーを備えたボルボのポールスター用は367ps/47.9kgm。
おなじみのゴルフもGTIじゃなくてRになると310ps/40.8kgm。そのアウディ版S3も、ほぼ同スペック。
フランス勢では(もう旧型になったけど)メガーヌR.S.は273ps/36.7kgm。日本で手に入る車種だけピックアップしてみても、まさに充実のラインアップといえる。
このあたりのスペックを見ていると、最大トルク40.8kgmあたりにひとつの区切りがあって、そこを超えて上へ突き抜けているクルマは、エンジンの「ただ者じゃない!」感がすごい。
端的な例がメルセデスAMGのM133型だ。基本設計が古いから最近の高効率ターボに比べると古典的高性能エンジンといった佇まいなのだが、言い換えるならレース仕様過給エンジンに近いコンセプトで開発されているということ。
いまどきの過給エンジンとしては珍しい8.6と低めの圧縮比は、1.8barという高いブースト圧を常用するためのものだし、タコ足マニホールドに直結された大柄なツインスクロールターボ、通気抵抗の少ない専用水冷インタークーラー、極太のインテークダクトなども、量産車というよりは競技車に近いデザイン。
とりわけ、水冷インタークーラー用のラジエターがフロントグリル内と右フロントホイールハウス前のデュアル装備となっているところなど、ふつうの量産車の感覚では信じられない凝り方といっていい。
いくらターボとはいえ、量産車で2Lから380ps/45.9kgmを絞り出すのはただごとではないことが、こういうヘビーデューティなディテールから想像できる。
対照的なのが、過給器をターボとスーパーチャージャーのツイン過給で備えるボルボのポールスター。
こちらは、現代ハイテクターボの極致といった印象で、乗った印象もAMGに比べるとずっと洗練されたパワーフィール。ワイルドなA45と比べると速さを感じさせずスマートなのだが、ふと気がつくととんでもない速度に達しているといったタイプだ。
パフォーマンス追求型の2Lターボはだいたいこの2パターンに集約されると思うが、コスト的な問題でA45AMGみたいな競技用っぽいエンジンは存続が難しそう。
最近FF最速を競っているメガーヌR.S.やシビックタイプRのエンジンなどは、ターボ系やインタークーラー周りをもうちょっと簡略化して、そのぶん可変バルタイやウェストゲートの電子制御などで安定した大出力を実現している印象がある。
さすがに、2Lターボスポーツでつけられる価格というと、500万円くらいがマックス。メカニズム的にも、落ち着きどころがあるように思う。
逆に、ボルボポールスターのようなハイテク型は、高級車に搭載することでコストを吸収できるから、新しい技術で伸びる可能性があるかも。
電動アシストターボやターボからのエネルギー回生など、コストをかければ実現できるネタはまだまだある。高性能ターボは、高級車がダウンサイズ用として使うことで、さらにいっそう発展していくんじゃないかな?
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