■上限金額に達するのは利用者全体の約3%ほど。意外に少ないと見るべきなのか⁉
ただし、値上げ額は利用距離によってさまざまだ。14%のうち、42kmまでの利用が半分弱を占めており、この程度なら値上げ額は大きくない。上限の1950円に達するのは、全体の約3%だ。
利用距離ごとの値上げ率の加重平均を計算したところ、料金収入の増加は3%程度と出た。利用者にとっては、平均して約3%の値上げということになる。
逆に値下げされるのは、まず深夜だ。0~4時の利用は2割引になった。深夜の利用率は全体の約6%。つまり、これによって料金収入は1.2%減少する。ただ、深夜に首都高を利用するのはタクシー、トラック、バスが8割を占めていて、一般ユーザーの利用は非常に少ない。
■物流業者等、料金値上げが死活問題となる利用者には値下げ幅が拡大する
もうひとつの値下げは、主に物流業者が利用するETCコーポレートカードの割引率拡大だ。専門用語だと「大口・多頻度割引のさらなる拡充」となる。具体的には以下のような内容だ。
「車両単位割引の基本割引率について、これまでの最大20%からさらに最大25%まで拡充するとともに、その割引対象額のうち、中央環状線の内側を通過しない利用分については、これまでの割引率5%からさらに10%まで拡充します。その結果、大口・多頻度割引は、これまでの最大35%から最大45%(車両単位最大35%+契約単位10%)まで拡充されます」(首都高のHPより)
大口・多頻度割引の計算は複雑で、詳細な利用データもない。すべての利用の割引率が10%拡大されるわけではないが、ざっと推測すると、平均割引率は従来より7~8 %程度上昇する。つまり、ETCコーポレートカードの利用者にとっては、これまでの平均30%割引(推測)が37~38%割引(同)となり、10%ほど負担が減少する。
首都高の場合、ETCコーポレートカードの利用率は、約3割を占めている。つまり、これによる料金収入の減少幅は、約3%となる。
■値上げの言葉が目立つが実際は利用実態に合わせた調整であり、今回の実施による首都高の収入増は1%程度だ
もうひとつ見落としてはいけないのは、中型車と特大車の値上げだ。
首都高は6年前まで、「普通」と「大型」の2車種区分だったが、2016年の料金改定時、NEXCOと同じ5車種区分に変更された。ただし、従来「普通」扱いだった中型車(4トン積トラックなど)と、従来「大型」扱いだった特大車(大型トレーラー)は、区分の変更によって大幅な値上げになってしまうので、激変緩和措置として暫定車種間比率が導入され、値上げが抑えられていた。
今回、その暫定比率が撤廃され、普通車に対して中型車は1.07から1.2に、特大車は2.14から2.75になった。つまり、中型車は約12%、特大車は29%の値上げだ。中型車・特大車の利用者は、大きな負担増になる。
ただ、この影響は、全体から見るとそれほど大きくない。首都高の交通量のうち、中型車は12%、特大車は1.8%と少ないからだ。これによる料金収入の増加も、2%程度にとどまる。
以上、料金改定による首都高の料金収入の変化をまとまると、このようになる。
●上限料金の値上げ/3%増
●深夜割引新設/1.2%減
●大口多頻度割引の拡充/約3%減(?)
●中型車・特大車の値上げ/2%増
<合計/約1%増>
このように、今回の料金改定で、首都高の料金収入は微増するという計算になった。つまり、利用者にとっては若干の値上げである。
これはあくまで平均値であり、個々の利用者ごとに事情は異なる。一般ユーザーにとっては、おおむね上限料金の値上げだけが関係するし、中型車や特大車のユーザーは、大幅な負担増が避けられない。
ただ、中型車や特大車といったトラックユーザーは、大部分が物流業者。値上げ対象外の普通トラックや大型トラックも所有しているケースが多く、大口・多頻度割引の拡充や深夜割引の新設が効いて、平均3~4%程度の負担減となるはずだ。
物流業者は負担減になるという私の推計は、全国トラック協会の動向が証明している。同協会はこれまで、首都高の値上げのたびに大反対運動を行ったが、今回の料金改定に関しては無反応だ。全国トラック協会が今、最も問題視しているのは燃料価格の高騰で、首都高の料金については何も言っていない。
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