中国で一番売れてるクルマは…なんと日産シルフィ!! 人気の秘訣と中国内での日本車人気

■合弁会社のルールと「セダン」人気

「一汽トヨタ」や「姉妹車」のワードが登場したので、ここで中国特有の自動車事情「合弁会社」をおさらいしよう。中国は輸入車に対して高い関税をかけており、それを回避するために自動車会社は余程の高級車やハイパフォーマンスモデルじゃない限りは、中国国内での生産を行おうとする。そして中国国外のメーカーが中国で生産設備を持つためには、中国国内のメーカーとの合弁会社を設しなければならないというルールがつい最近まで存在した。

 日本のメーカーで言うと、トヨタは第一汽車との「一汽トヨタ」と広州汽車との「広汽トヨタ」、日産は東風汽車との「東風日産」「東風インフィニティ」「鄭州日産」、ホンダは東風汽車との「東風ホンダ」と広州汽車との「広汽ホンダ」「広汽アキュラ」、三菱は広州汽車との「広汽三菱」、マツダは長安汽車との「長安マツダ」などの合弁会社が存在する。

 この合弁会社を設立しないといけないルールは、テスラの中国進出をきっかけに廃止されていくことになる。テスラは2018年に中国国内の生産を行うために上海に工場を設立したが、現地法人の名前は単に「テスラ(上海)」となっており、中国国内のメーカーと合弁を組んでいないことがわかる。これは2018年に電動車の生産に限り合弁会社の設立が不要となった新しいルールによるもので、その後段階的に2020年に商用車の生産、そして2022年に全ての自動車の生産において規制の撤廃がなされた。

 冒頭で紹介した日産 シルフィも、東風汽車との「東風日産」が生産・販売をおこなっている。中国ではもちろん世界的な流れである「クロスオーバーSUV」も人気で各メーカーともにさまざまなモデルを拡充させているが、それと同時にいまだにセダンへの根強い人気があるのも事実。古き良き乗用車の形状であるセダンに憧れを持つものが多いということの表れなのかもしれない。

 例えばフォルクスワーゲンのラインナップを見ても、上汽フォルクスワーゲンと一汽フォルクスワーゲンの2つの合弁会社を合わせてSUVは13車種、セダンは12車種と、SUVとほぼ同じ数のセダンの選択肢を用意している。

この根本的な中国におけるセダン人気に加え、「性能が良い」「故障が少ない」「経済的である」といった日本車への評価が合わさり、シルフィはここ5年間で乗用車販売台数トップ5の常連となっている。

 また、シルフィ特有の事情で言えば、最新モデルが11万9000元(邦貨換算:約237万4000円)で販売されているのに対し、併売される先代モデルが9万9800元(約199万1000円)と安価なことも人気の大きな要因となっている。

■アルファードは中国でも大人気

 シルフィ以外にも中国で絶大な人気を誇る日本車が、トヨタのアルファードだ。中国では広汽トヨタからアルファード、一汽トヨタからはヴェルファイアが「クラウン ヴェルファイア」として販売されており、両合弁会社のフラッグシップとなっている。アルファードは日本でも幅広い消費者層に人気だが、中国での認識はれっきとした高級車。その一因が価格帯だが、これはアルファードとヴェルファイアが中国国内では生産されておらず、輸入車扱いで15%の関税が課されていることも理由のひとつ。

トヨタアルファードの中国仕様
トヨタアルファードの中国仕様

 中国で販売されているアルファードは、日本でのHYBRID Executive Loungeに相当し、日本では759万9000円から販売されている。一方で、中国では3つのグレードが83万9000元(約1673万7000円)から92万元(約1835万3000円)の間に設定されており、日本の約2.5倍の値段となっている。しかし、実際の販売価格はディーラーが自由に価格を設定できるため、さらに数百万円が上乗せされる場合もある。メーカー希望小売価格で手に入れられる人はほとんどいないと考えていいだろう。

 関税以外でさらに値段を高額にさせる要因の一つが、輸入できる台数だ。アルファードとヴェルファイアはひと月に限られた台数しか輸入できないため、当然正規ディーラーで新車として手に入れるハードルも高くなる。優先的に納車するために前述の上乗せ料金を払うこともできるが、それ以外には新古車を買うという手段がある。

 ここでさらに驚きなのが、新古車の価格も新車の2倍近い価格で売られているという点。中国の中古車サイトを覗いてみると、ナンバープレートが交付されていない新古車が150万元(約3000万円)という超高価格で掲載されているなんてことも当たり前だ。

 また、走行距離5万キロの2019年型ヴェルファイアでも新車価格より高い93万8000元(約1854万2000円)で販売されている。いかにこの2車種のリセールバリューが半端ではない状況となっているのかがわかる。人気に火がつく元々のきっかけは香港の映画スターなどがみんなアルファードで移動していることからとも言われているが、ここまでの「狂気」とも言えるほどの人気を集めることになるとはその当時、誰も予想しなかっただろう。

 一概に「日本車が人気」と言っても、人気の車種を詳しく見てみると、それぞれ人気の理由や、取り巻く状況も千差万別なのが見えてくる。よく「EVでは出遅れているから中国では影響力が弱い」と言われがちな日本車だが、決してそうではない。トヨタが満を持して世に送り出すEVブランド「bZシリーズ」も、中国向けモデルは中国国内での生産が決定している。日本勢のEVが出揃う今後、市場と消費者にどのような影響を与えていくかが楽しみだ。

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