元ホンダ社長、吉野浩行氏逝去に手向ける元ホンダ名物開発者の「哀悼と思い出」

■LPLが真にLPLでいられたのは、吉野氏のおかげ

 このように、普段、開発チームに任せて、見守っていながら、重要な時、開発チームの支えとなり、判断実行する素晴らしい社長でした。

 私は、吉野社長から任せていただき、自由奔放に、創造的な開発業務を展開させていただきました。そのおかげで、初代ストリームもUSオデッセイ2005年モデルも大ヒット商品になることができました。

 この時代のホンダでは、LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)は、一企業の社長のごとく、すべての領域において、責任を任され、実行し、判断し、お客様に、真に喜ばれる商品技術を開発していました。

■存在感を失いつつある今のホンダ

 今のホンダには、ホンダOBとして何点か、心配になる点があります。

 それは、まず、日本市場において、欲しいと思うホンダ車が、少ないことです。私は今、ホンダ車に乗っていません。それは「FUN TO DRIVE」と実用性、経済性、さらに存在感のあるクルマがホンダに少ないからです。

 私は今、初代ストリームやUSオデッセイ2005年モデルを真似して開発したようなFFのBMW2シリーズに乗っています。このクルマ、ホンダでは難しかったような質感の高さはさすがと言わざるを得ません。

■「お上」の言いなりに働いたほうが評価される仕組みは間違っている

 また、自由奔放で創造的な開発エンジニアが、少なくなっている気がします。私が開発現場にいた頃と時代が違うとはいえ、将来の動向(世の中の変化、お客様の志向の変化、商品技術の変化など)に対して、アンテナが低すぎると思います。コロナ禍でコミュニケーションが難しいとはいえ、ネットワークが発達した時代なのでいかようにもできると思います。

 この原因はマネジメントの変化にあると思います。昔は縦(機能)と横(機種)の関係がバランスよくうまく運営されていました。ですが、今は縦のパワーが強すぎます。ホンダの文化(技術に上下関係なし)を大切にして、縦/横、営業/開発、生産/開発、設計/研究など、いろいろな分野で意見を戦わせ、物事を進めるような企業風土を見直してほしいと思います。

 それには、開発プロジェクトに任せるような運営が必要だと思います。大企業になってリスクが大きくなり、判断が難しいとは思いますが、企業は「人」です。その人の育成、マネジメントが鍵であると思います。

■マネジメントは「自ら決裁すること」と「任せること」をしっかり分けるべき

 最近で言うと、八郷さんは、伊東社長時代の拡大路線の修復を実施し、次の時代を担う布石を打ち、うまく三部さんにバトンタッチしたと思います。三部さんは、将来のモビリティ業界を担うホンダを目指して、大きく軌道修正しながら、お客様に新価値の高い商品技術を提供しようとしていると思います。

 ただし、マネジメントの分野ではまだ手応えが感じられません。上記の苦言を解決してくれるアウトプットを期待しています。

 吉野さんの追悼文として、苦言を言わせていただきました。吉野さんは私のホンダ人生にとって、大切な存在であり、「任せてくれる」よき社長でした。今後のホンダにとっても、学ぶべき指導者であったと思います。合掌!


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