ホンダが生み出した人型ロボット「ASIMO(アシモ)」が誕生から20年を迎えた。自動車メーカーが生み出したロボット、その登場時には衝撃を受けたことを憶えている。ただホンダに取材をしたところ、明確な時期は公表していないが、その開発はすでに終了しているとのことだった。
今回は開発は終了したが、ロボティクス分野で大きな実績を残したアシモの歴史を振り返りつつ、そもそもホンダという自動車メーカーが、なぜロボットを生み出そうと思ったのか? またここまでアシモで培った技術は何に生かされているのか? などについて考察していきたい。
文/御堀直嗣
写真/HONDA
【画像ギャラリー】ここからASIMO(アシモ)は歩み始めた!! その歴史と培われた技術から生まれたモビリティなどを紹介!
■ロボットの可能性をより広げた先駆者
ホンダの人型ロボット「ASIMO(アシモ)」が誕生して、20年が経った。発表は2000年10月で、21世紀を目前に控え、本格的な二足歩行ロボットの完成は世界をたちまち魅了した。それからの20年間に、アシモが歩いた距離は8000km近くにおよび、これは東京~大阪間を10往復した距離に相当するという。しかし、現在アシモの開発は終了している。アシモは、ホンダに何をもたらしたのだろう?
ホンダの開発拠点である本田技術研究所内で二足歩行ロボットの研究がはじまったのは、1986年ごろであるという。1993年になると、人間型をした「P1」というロボットに到達し、ここから「P2」、「P3」と開発は進んで、2000年に「アシモ」が誕生する。
当時ホンダの社長であった吉野浩行氏は、「アシモの開発にあたり、人間の素晴らしさがよくわかることがある」と話し、「人の役に立ちたいという思いを込めたロボットだ」と語っている。
アシモが訪ねた国は25カ国に及び、米国ニューヨーク証券取引所で取引開始のベルを鳴らしたり、デトロイト・シンフォニー・オーケストラを指揮したり、2011年には東日本大震災で被災した子供たちへ特別授業を行ったりした。
アシモが誕生する前の1999年には、ソニーから犬型ロボットの「アイボ」が生まれた。2004年にはトヨタもパートナーロボットを公開し、翌2005年の愛・地球博で8体による楽団演奏などを行った。しかしなによりアシモは、人型ロボットであるだけでなく、その背丈や顔つき、そして動き方などに愛らしさがあり、機械ではなくあたかも人間同士のように心を通じ合わせられるような身近さを覚えさせた。
そして人間と同じような二足歩行を実現したことが、のちのさまざまなロボット開発で可能性を広げたといえるのではないか。
コメント
コメントの使い方