クルマに限らず、すべての商品は開発者や製造者が丹念に造り上げ、期待を持って市場で発売される。そこはすべて共通だが、しばらく時間が経過すると、売れ行きや認知度に差が生じてくる。
クルマの場合は、売れないと「不人気車」「失敗作」などといわれ一代限りで終わることも多い。ここではそのようなメジャーになれなかった過去のクルマを取り上げたい。
(編集部註/本企画では、特に各メーカーがデビュー時に「これがクルマの新しいスタンダードになるはずだ」と、市場に新しい価値観を持ち込もうと意気込んだモデルのなかで、夢破れて生産中止となり、そのコンセプトを受け継ぐ後継車も見当たらないクルマをセレクトしました)
文:渡辺陽一郎
■トヨタカローラルミオン 2007年7月〜2015年12月
「カローラ」の名称は付くが、カローラアクシオ&フィールダーとの共通点は、トヨタカローラ店が販売することだけだ。「カローラ」を名乗った背景には、親しみやすさを与え、カローラの登録台数を増やすことも視野に入れていた。
車両の性格は、2列シートのミニバンという印象。全長は4210mmに収まるが、全幅は1760mmとワイドだ。全高も1630mmに達する。
ピラー(柱)の角度を立てたこともあって、空間効率は優れていた。外観も大きく見えた。プラットフォームはオーリスと共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2600mmで等しい。
ワイドなボディを採用したのは、北米の若年層を対象としたサイオンブランドで、2代目xBとして販売したからだ(初代xBはbBの姉妹車)。つまり北米向けのクルマを国内でも取り扱ったことになる。
全幅がワイドなミドルサイズのハッチバックは、日本では売りにくい。3ナンバー車を好調に売るには、ハイブリッド車のプリウス、先進の安全装備を備えるインプレッサスポーツのような強いセールスポイントが必要だ。
カローラルミオンは背の高いコンパクトカーの拡大版と受け取られ、国内市場に馴染みにくい商品だった。
しかも価格が高い。2008年当時で1.5Lエンジンを搭載する1.5Gが178万円だ。同時期に売られた初代ウィッシュ1.8Xは、3列のシートを備えたミニバンで、1.8Lエンジンを搭載しながら180万6000円だ。
ウィッシュに比べるとカローラルミオンは、ボディがワイドで取りまわし性が心配され、その割にシートは2列になってエンジンの排気量は小さい。機能と価格のバランスでも買い得とはいえず、売れ行きを下げた。
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