車の華といえば、やはり「エンジン」だ。近年、製造効率を向上すべく、同じプラットフォーム(車台)を使い、セダンからSUVまで製造することも珍しくなくなってきた。エンジンもその例に漏れず、同じモノを多くの車種に展開するメーカーも増えている。
しかし、エンジンの場合、モデルの車重や用途によって特性を変えている例がある。その“味付け”の変更は多岐に渡り、同じエンジンなのに別物に感じることもあるのが興味深いところ。
基本は同じでも中身は異なる“同エンジン車は、明確にスペックが違う例、スペック上は大差なくとも特性が違う例など、さまざまなパターンが存在する。
文:松田秀士/写真:編集部
ロードスターは高回転型、アクセラは中低速重視
まず筆頭に挙げたいのがマツダの1.5Lガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 1.5」だ。
このエンジンはロードスターに搭載されるエンジンとして誰もが知っているはず。しかし、同じエンジンがデミオにもアクセラにも搭載されている。
一番わかりやすく比較するなら、車両重量が1280kgのアクセラと990kgのロードスターだろう。まずスペックを確認すれば一目瞭然。
ロードスターの出力は132ps/7000rpm:152Nm/4500rpmなのに対して、アクセラでは111ps/6000rpm:144Nm/3500rpmとなっている。
SKYACTIV-Gエンジンは、マツダが手塩にかけて育てた新世代の高効率直噴エンジン。一番の注目は量産ガソリンエンジンとして世界で初めて14.0という高圧縮比を実現している点だ。
これによって中低速トルクが大幅に向上し燃費も改善している。その上げ幅は同社旧エンジン比で15%としている。圧縮比を上げれば爆発力が強くなり、トルクが向上することは理解できるはず。
ただし、圧縮比を上げるとノッキングという異常燃焼が起きやすくなり、エンジンが壊れる危険性が増す。そこを技術でクリアしたことが大きい。
また、排ガスは音波より速いので、排気バルブが開いている極短時間に吹き返して他の燃焼室に入り込むため4-2-1という排気システムを完成させている。
昔、レースの世界でも「あそこのマフラー屋に頼めば速くなる」という職人が居た。SKYACTIV-Gの技術説明を聞いたとき、なるほどこういうロジックだったのか! と妙に納得したものだった。
しかし、この両車に搭載されるSKYACTIV-G 1.5の圧縮比は14.0ではなく13.0。実はデミオのMT仕様に搭載されるSKYACTIV-G 1.5が14.0なのだ。
ロードスターとアクセラでは、アクセラのほうが明らかに中低速寄り。4000回転前後の力感がしっかりとある。
確かに、アクセラクラスだとターボじゃないのだから2Lは欲しいと考えてしまうが、実際乗ってみるとこれで十分と感じてしまうのだ(多人数乗車のケース以外は)。
そしてロードスターはというと、こっちは車重が1tを切っている軽量派。低中速トルクはそれほど重要視する必要がない、と見た。
だから高回転域でストレスを感じさせない7000回転を越えて抜けるような吹き上がり。同時に排気音もレーシー。同じエンジンとは思えないくらいに個性が違います。
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