【コンパクトカー対決】 日産 ノートe-POWER 対 ホンダ フィット
(TEXT/渡辺 陽一郎)
2017年5月「ノートが日産車では30年ぶりの月販台数1位」となったが、大きく貢献したのがノートe-POWER。ここ数カ月は無資格検査発覚で停滞しているが、2017年トータルで見るとライバルのフィットを“はたき込むように”引き離す。その差はどこからきたのか?
フィットは2001年の発売以来高い人気を保っているが、ノートが2016年にe-POWERという“飛び道具”を加えて売れゆき増大。2017年全体では販売順位が逆転している状況だ。
■今回の実燃費計測
・走行距離:66.6km(ほぼ高速道路を巡航)
・ノートe-POWER:23.4km/L
・フィットハイブリッド:25.7km/L
■ハンドリングはどうだ?
ノートe-POWERは駆動用モーターと併せて発電機も搭載するなど機能がやや複雑。それもあり車両重量は、ノーマルエンジン車を170kg上回り、フィットハイブリッド(HV)と比べても70kgほど重い。
そのためにコーナーを曲がったり車線を変える時は、ボディの重さがつい気にかかる。基本的には後輪の接地性を優先させた設定で不安はないが、峠道では旋回軌跡を拡大させやすいので曲がりにくく感じてしまう。
対するフィットHVはボディが軽く、2017年にボディ剛性と足まわりを改良。安定性や操舵に対する車両の反応はノーマルエンジン車に近く、峠道ではノートe-POWERよりも自然な感覚で運転できる。軽快感も伴う。
ゆえに走行安定性はフィットHVが優れるが、動力性能はノートe-POWERの圧勝だ。エンジンは発電機として使われ、駆動はモーターだから、アクセル操作に対する加減速の反応が素速い。追い越しなどでは2.5Lクラスのガソリンエンジンを積んでいる感覚の加速で、フィットHVは1.5Lなりの加速感。またエンジンが発電を行い、駆動はモーターが担当する仕組みだからノイズは小さい。
■燃費はどうだ?
JC08モード燃費はノートe-POWERが優れるが、今回の実燃費は23.4km/L。対するフィットHVは25.7km/Lで上回った。ただし数値の違いは10%以下。
■そのほかの機能はどうだ?
前後席の広さは両車ともに同程度だ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、Lサイズセダンと同等の握りコブシ2つ半。その上で比べると、ノートe-POWERにリラックス感覚が伴い、4名乗車時の居住性も少し上回る。
逆にラゲッジの使い勝手はフィットHVが勝る。燃料タンクが前席下の搭載なので荷室の床が低く積載容量も大きい。シートアレンジも多彩。居住性ならノートe-POWER、積載性などの実用性ならフィットHVが勝るとなる。
■最後に、コスパはどうだ?
ノートe-POWERメダリストの価格は232万9560円で、フィット HV Sホンダセンシングは220万5360円。価格はノートe-POWERが高いが、駆動用モーターと発電機を併用するHVの違いを考えると、むしろ割安になる。エコ/パワーモードでは、アクセルペダルの操作だけで速度を自由に調節することも可能で、ノートe-POWERには付加価値が多い。
そのためにHVの機能を重視するとノートe-POWERが買い得だが、フィットHVにはラゲッジの多彩な機能が備わる。安全装備面もホンダセンシングのほうが高機能だ。それでも、“e-POWER”という新たなシステムがユーザーに合致したことが決め手になり、フィットをリードしているといえそうだ。
■まとめ…軍配はノートe-POWER! その勝因は?
フィットHVはラゲッジが広く安全装備も充実してお買い得。が、動力性能や走りの楽しさ、快適性を重視するとノートe-POWERに軍配が上がる!
【永田恵一の視点】 後席の快適性に見るノートとフィットの違い
両車ともコンパクトカーのなかでもスペースを重視したクルマだけに充分なヘッドクリアランス(頭上)と、足を伸ばして組めるほどの膝前の長さを確保。特に膝前の長さに関してはノートe-POWERが大きなアドバンテージだ。
が、フィットHVも十二分に広く、かなり身長の高い人でもくつろげることを踏まえると、ノートe-POWERの膝前の長さが広いのも、フィットHVに対して約100mm長い全長を考えると当然といえば当然。さらにノートe-POWERの後席は着座位置が低く足を投げ出すような姿勢になるのに加え、座面が柔らかすぎて長時間座ると疲れそうに感じるのを考慮すると……、総合的な後席の居住性はフィットHVに軍配を上げたい。
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