■丸本社長が今年3月のスーパー耐久会見で突如発言したことが前兆だった?
そこで、さまざまなルートから取材してみた。藤原副社長と最近話をした人によれば、「健康上の問題はないと思います」。さらに、複数のマツダ関係者に退任理由を当たると皆さん、「わからないんです。本人から退任を申し出たようです」。
むしろ藤原副社長最大のプロジェクトであるCX-60から始まるFRラージ商品群がデビューするタイミングのため、退任する理由などないと口を揃える。
ただ、少し前からマツダの空気が変化していた。一番驚いたのは高級車路線を邁進していた藤原体制ながら、CX-60の価格が驚くほど戦略的だったこと。先行試作車を試乗した後、価格を知って「これはお買い得ですね!」と思ったほど。
CX-5と比べたってリーズナブルなのだ。今までの「いいクルマなら高くても売れる」という強気一辺倒のマツダなら考えられなかった価格戦略だと思う。
さらに、モータースポーツを忌避してきた藤原副社長だったが、今年3月に開催されたスーパー耐久レースの記者会見で突如、丸本社長が「技術陣からスバルさんのBRZ、トヨタさんのGR86の手強さを目の当たりにし、2.2Lディーゼルの300psのエンジンを開発したいという強い要望を受けました。ぜひ後半戦ではガチンコで戦わせていただければと思います」。目ん玉が出るほど驚く!
■マツダが今後、早急に打つべき対策は3つある!
丸本社長、今までマツダのクルマ作りについて自分の意見を述べたことは一度もなかった! このコメントを聞いて「藤原さんがOKを出したのだろうか?」と思った次第。CX-60の価格設定と合わせ、今にして考えると、3月時点で社内におけるプレゼンスが弱体化していたのかもしれません。いずれにしろ新しいマツダが始まる可能性が出てきたことは間違いないと思う。
さて、今後どうなるか? 早急に手を打たなければならない対策は3つ。
まず、「顧客ニーズのあるクルマを作る」ことだ。「マツダ6をベースにレガシィアウトバックのようなクロスオーバーを作りたい」とか「CX-5のガソリンターボをスポーティな外観にしたい」という社内の意見をこれまですべて藤原副社長が潰してきた。優れた4WDシステムや自動ブレーキ性能の積極的な宣伝も禁じている。
ふたつ目はパワーユニット。SKYACTIVのパワーユニットを担当していた人見光夫さん(シニアフェローイノベーション)は電動化車両を極端に嫌っており、それを藤原副社長が強く支持したため完全に出遅れてしまった。
結果、トヨタからクルマを融通してもらわないと欧州の燃費規制をクリアできない状況になってしまう。今日にでも電動化時代に対応できるパワーユニット戦略を起動させないと間に合わない。
3つ目がトヨタとのアライアンス強化。藤原副社長はトヨタを嫌っており(本人から何度か聞きました)、日本での業務提携なし。トヨタがスバルやスズキと立ち上げた電動化推進チームにも参加していない。
今からマツダが単独で電動化を勧めるのは時間的に難しい。再度トヨタとのアライアンスを再構築し、お互いの得意分野をクルマ作りに活かしておくべきだろう。
ここでキーマンとなるのが、毛籠勝弘取締役専務と廣瀬一郎専務執行役員となる。毛籠さんはアメリカを担当しており、トヨタと上手に協業。藤原副社長の方向性と違い、顧客のニーズを重視したCX-50を開発して大ヒット。
現在、マツダの収益は大半がアメリカで毛籠さんの仕組んだビジネスによる成果。廣瀬さんは藤原副社長の右腕だった。毛籠さんと違い、「いいクルマを作れば高くても売れる」という考え方。
どちらがマツダを引っ張っていくかで大きく今後も変わってくる。大きな影響を与えそうなのは今まで現場に口を出してこなかった丸本さんだ。毛籠さんを支持するのか、藤原色を強く持つ廣瀬さんを支持するのか大いに注目したい。
藤原体制になって以後、ずっとマツダに厳しいと言われてきた私としては、毛籠さんを活かしてくれたら明日のマツダは素晴らしいと考えます。
【画像ギャラリー】役員改選で新生マツダに突き付けられる課題とはいったい何か?(14枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方