■スタイリングは大きく変化
似ているといえば似ているように思えるかもしれないが、丸く「てんとう虫」プロポーションのスバル360があまりにも個性的にまとまり過ぎていたこともあり、後継スバルR2はまったく別物の印象を受ける。
よく見るとボディ後半などは充分面影を残しているのだが、前半分が大きく変化したことで印象は一転してしまっている。
たくさんのライヴァルが出現したおかげで、いろいろな目標が掲げられてきたのだが、まずは居住性の改善が図られた。
ちょっとスクエアなボディが与えられたのはそのためだが、スバル360のフェンダ部分の膨らみがそっくりボディに吸収されたような平面的なボディになったことで、時代的にも新しくなった印象を与えたりした。
その分、エンジン、サスペンションなどのメカニカル部分はそっくりスバル360の手法を受継いでいた。全長などは「軽」の規制ぎりぎりで変わりないが、ホイールベースだけは120mmも延長され、1920mmになっているのが特徴的だ。いうまでもなく、その延長が室内の拡大に寄与している。
つまり、エンジンはEK33型と呼ばれる空冷直列2気筒356cc。前のスバル360用はEK32型だったから、どこが変化したかというと、鋳鉄製のブロックをアルミ製に変更するなどの改良が加えられている。
いうまでもない、ライヴァルに遅れを取らないための施策というものだ。30PSを6500r.p.m.で発揮するという高回転高出力エンジンだった。
■反撃も及ぶことなく……
スバルの反撃はその後もつづいた。デビュウ半年も経たないうちに次なる新ヴァージョンが追加される。1970年1月には生産累計100万台を達成した、と喜んでばかりもいられなかったのだ。
新登場したのは1970年4月に32PSエンジン搭載の「スポーティDx」、36PSの「SS」である。ライヴァルたちを含め最強の「軽」は36PS、とカタログ上の競争が激しかった。当時の若者はその数字に一喜一憂していたのだった。
さらに10月には「GSS」が追加される。まあ、GTだのGSだの若者受けするモデル名が次々に登場して、逆に普通の「デラックス」くらいでは注目度も低くなってしまっていた。振り返るとおかしな時代だった。
しかしここで注目すべきモデルが含まれていた。それは「カスタムL」「スーパーL」なるモデル。なんとこれにはEK34型水冷エンジンが搭載されていたのだ。これまでずっと空冷エンジンを頑張ってきたのに……愛好者は少なからず戸惑っただろう。
しかもリア・エンジンにしてラジエータはフロントに置き床下を温水の流れるパイプでつなぐ、というまるでミドシップのレースカーのようなレイアウトを採用したのだった。
そんなに目まぐるしくチェンジしつつも、結局は1972年6月に新しいモデル、スバル・レックスにチェンジされてしまう。
その後も1年近く生産がつづけられ併売されたが、振り返ってみるに、スバルR2はなんだがレックスのために試行錯誤をつづけていたような気がしてならない。それだけに、趣味的にはちょっと捨て置けないモデル、でもあるのだ。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
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