振動・騒音、乗り心地などが悪化する可能性も
大きなメリットをもたらす軽量化ですが、一方で車体が軽くなることによって、タイヤの接地荷重の低下や剛性、強度の低下といったリスクも潜在します。やみくもに軽量化すると、潜在リスクが表面化してデメリットとなるので、注意が必要です。
・タイヤ接地荷重低下によるトラクションの低下
一般に、車体が軽くなる、あるいは、クルマの後ろ側だけ軽くするなど重量バランスが崩れると、グリップ力が弱まり、十分なトラクションが発生せず、滑りやすい路面や、急激な加減速を行った際にスリップしやすくなる場合があります。ブレーキ性能も同じで、クルマは軽いけど路面にパワーが設計した通りに伝えきれず、滑りやすい路面などでは、場合によっては危険な状態に陥ることも考えられます。
・ボディ剛性低下による振動・騒音の悪化
剛性が低下すると、ボディに捻じれやたわみが発生し、サスペンションが本来の機能を果たさず、操縦安定性、特にコーナリング性能が悪化します。さらには、ボディが「ワナワナ」するような揺れが収まりにくくなり、不快な振動・騒音が発生して、乗り心地や快適性も悪化します。
・ボディ強度の低下やボディ特性の変化による衝突安全性の低下
本来は、運動エネルギーの小さい軽量ボディの方が衝突エネルギーは小さいので、衝突時は安全です。しかし、強度が低下する軽量化やエネルギー分散性の悪い構造となるような軽量化を行うと、衝突安全性能が低下して危険です。衝突時に衝撃を吸収、分散する車体骨格には、頑丈なで質量のある部材が使われています。
・バネ下荷重の軽量化では乗り心地が悪化することも
バネ下(サスペンションやタイヤ、ホイールなど)が軽くなればサスペンションの動きが軽快になり、路面の凹凸に追従しやすくなり、一般的には乗り心地が良くなります。ただし、細かな振動に対して敏感となるため、乗り心地が悪くなるケースもあります。
また軽量のアルミホイールを装着した場合、加減速レスポンスが良化することがありますが、タイヤにかかる力が弱まるため、タイヤが振動を吸収できずにロードノイズが大きくなる、振動が気になることもあるので、注意が必要です。
・フライホイールを軽量化では、アイドル回転変動が増大しやすく
エンジンの後端でクランクシャフトにつられて回転する重い円盤状のフライホイールは、回転変動を抑えてスムーズなエンジン回転を維持する役割を担います。フライホイールを軽くすると、加減速レスポンスに優れたスポーツモデル向きの仕様となりますが、一方でアイドルの回転変動が増大しやすくなります。フライホイールのサイズ・重量は、クルマの性格に応じた選択が必要です。
このように、軽量化によるリスクはいくつかありますが、メーカーが軽量化する市販車については、構造解析などのシミュレーションや衝突試験などで十分確認しているので、大きな問題は発生しません。しかし、ユーザーが、例えばホイールなどを軽量化したことで、振動・騒音のリスクが高まる可能性があることは、留意しておく必要があります。
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バッテリーEVでは、大量の重いバッテリーを搭載するので、現状では車重がガソリン車より100kg~200kg増えます。課題である実用的なEV航続距離を実現するためには、バッテリー容量の確保と同時に、軽量化は不可欠。軽くて強い超ハイテンやCFRPへの材料置換をもっと積極的に進めなければならないと考えます。
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