世の中にはさまざまな「都市伝説」がある。「黄色いビートルを見ると幸せになる」、マスクをした女性が「私綺麗?」と尋ねてきて「綺麗」と答えるとマスクを取る「口裂け女」……。
今にして思えばありえない信じがたい話で、まさに都市伝説である。
ところで、自動車界に都市伝説はあるのか、おもしろまじめに検証してみたいと思う。
文/伊達軍曹
写真/ベストカーweb編集部、Adobe Stock(トップ画像=Tupungato@Adobe Stock)
■検証!! 自動車界における3つの都市伝説
自動車界における3大都市伝説といえば、
●トヨタ車は壊れず、下取り価格も高いので長く乗れる
●ホンダ車はボディがヤワで、ジャッキアップすると歪む
●マツダ車は「マツダ地獄」と言われるほどリセール価格が安い
という3つになるだろうか。
昔から言われてきたこれら都市伝説は本当なのか? あるいは「本当だった」のか? もろもろ検証してみることにしよう。
まずは「トヨタ車は壊れず、下取り価格も高いので長く乗れる」という都市伝説について。これは、都市伝説というよりは「おおむね本当のこと」と言っていいだろう。
もちろんトヨタ車とて小さな機械部品の集合体であることに変わりはないため、「絶対に壊れない」なんてことはそれこそ絶対になく、壊れるときは普通に壊れる。
しかし多くの自動車整備士やユーザーへのヒアリング経験に基づいて言うなら、やはりトヨタ車は日本車のなかでも壊れにくいグループに入り、イタリアあたりの輸入車と比べれば「5億倍は壊れにくい!」ということになる。
トヨタ車の壊れにくさにはさまざまな要因があるはずだが、大きなところでは「下請け部品メーカーに対する要求がやたらと厳しい」というのがあるはずだ。厳しすぎて、下請けメーカーさんは大変そうだが……。
そして「トヨタ車は下取り価格が高い」というのも、「人気車についてはおおむねそうですね」と言える。
新車の5年後の残価率は「平均30%前後」とされているが、ランドクルーザーやランドクルーザープラド、ハリアー、ヤリス クロス等々、トヨタ車のなかでも人気が高いモデルの5年後残価率は30%を大きく超えている。
これらのモロモロを総合すれば、「トヨタ車は壊れず、下取り価格も高いので長く乗れる」というのは、都市伝説ではなく「事実に近い話ではある」と結論づけていいだろう。
■ホンダ車における「ボディがヤワだ」都市伝説
お次の「ホンダ車はボディがヤワなため、ジャッキアップすると歪む」というのは、完全なる“都市伝説”だ。いや30年以上前のことはよく知らないが、少なくともここ20年ぐらいのホンダ車のボディは「ペラペラで、ジャッキアップするだけで歪んでしまう」ということはない。
ホンダ車のボディが「ペラペラだ」と一部で言われるようになったのは、衝突時の衝撃を逃すことで運転者や乗員、あるいは歩行者などを守る「クラッシャブルゾーン」の考え方を早くから導入していたがためだ。
それが証拠に2008年4月、つまり今から14年前に書かれた『Honda Technology Story』というホンダ公式の記事から、一部を引用しよう。本田技術研究所の主席研究員だった杉本富史氏が、同社の「67号棟」と通称された全方位衝突実験施設について語っている話をまとめた記事である。
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「(前略)そして2000年4月。リアルワールドでクルマ同士の衝突実験を行える世界初の屋内型〈Car to Car〉全方位衝突実験施設と、より人体構造に近い第2世代の歩行者ダミー人形が完成した。
以来Hondaは、クルマ同士の衝突を考えるコンパティビリティ対応ボディをいち早く進化させ、先進の歩行者傷害軽減ボディを採用したクルマを、確固とした信念でつくり続けている。
(中略)一気に話し終えた杉本は、最後にこんなエピソードを披露した。
彼は、かつて事故にあった経験がある。後部からトラックに追突されたのだ。そのとき事故の現場で聞いたのは、Honda車はボディがペラペラだからよくつぶれるという誤解の声だった。
『ボディがペラペラでつぶれるのではなく、衝突の衝撃を吸収するためにつぶしているんだ。一方でキャビンはつぶれずにしっかりと乗員を守る。そういうクルマのほうが安全なんだ!』と言いたいのを、彼はぐっとこらえたという」
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30年以上前のホンダ車にまつわる都市伝説を、いまだ真に受けてる人がもしもいるとしたら、ぜひ反省していただきたいと思う。