30年でシェア大逆転!! 三菱とホンダはなぜここまで差が開いたのか

 直近では2017年にエクリプスクロスを発売した三菱。しかし、同車は実に4年振りとなる新型車の投入でもあり、三菱の国内販売シェアは直近で2%台にまで低下している。

 それでも三菱といえば、かつてトヨタ、日産に次ぐ“業界3番手”をホンダと争っていたイメージも強い。

 なぜ、ここまでホンダとの差が広がってしまったのか。「かつての三菱にあって、今の三菱自動車にないもの」をデータから紐解く。ホンダと三菱の国内シェアを見ると、想定していた以上に、三菱はホンダを脅かしていた時代もあったのだ。

文:永田恵一/写真:編集部、MITSUBISHI


実は三菱が勝っていた年も! ホンダ&三菱の国内シェア変遷

【表】「日本自動車工業会」、「日本自動車販売協会連合会」統計データより作成。※2018年は1-8月期。2000年までの三菱自動車のシェアは三菱ふそうも含む

 はじめに「三菱自動車の頂点はいつか」を改めて確かめるべく、ここ30年の三菱自動車とホンダの国内シェアをデータから分析したい。

 30年前の1988年から1993年までの国内シェアはホンダが10~13%台、三菱自動車が7~9%台であった。

 大きな動きがあったのは1994年で、翌1995年と三菱自動車は僅かながら国内シェアでホンダを上回り、三菱自動車の国内販売における最高到達点に達する。

 三菱自動車がホンダを抜いた理由としては、1980年中盤から行っていたRV戦略がこの頃に「RVブーム」として花開いたことや、後述するように1987年からの10年間で登場したクルマに魅力的なものが多かったことが挙げられる。

 しかし、1996年になると、ホンダがオデッセイ、CR-V、ステップワゴン、S-MXなど、“クリエイティブムーバー”と呼ばれた車を発売。三菱と対照的に遅れていたRVのタマが揃い、1993年までと同じような状況に戻ってしまった。

 その後ホンダが日産の低迷もあり順調にシェアを伸ばしたのに対し、三菱は21世紀に入ると商品そのものによる部分に加え、リコール隠しや燃費不正によりブランドイメージが低下。【表】の通りシェアを落とし続けている。

「かつての三菱」にあって「今の三菱」にないもの

1991年に登場した2代目パジェロ。RVブームを牽引した三菱の屋台骨で、ホンダをも上回るシェア拡大にも大きく貢献した1台だ

 このようにシェアを落としてしまった三菱だが、かつての三菱にあって今の三菱にないものは何なのだろうか。「良かった時代の三菱」には、大きくわけて3つの魅力があった。

 ひとつ目は、「コンセプトが新しい、インパクトがあるなど、とにかく魅力的なクルマ、技術が多かった」点だ。

 三菱に勢いを感じ始めた1987年から10年ほどで、以下のように、ほぼ毎年魅力的な新車を市場に投入していた。

■1987年
・6代目ギャラン/高めの全高で広い室内を確保しながらカッコいいスタイルをしたミドルセダン。4バルブDOHCターボ、4WD、4WS、4ABSを持つスポーツモデルのVR-4がイメージリーダーに

■1989年
・6代目ミニカ/全体的な完成度の高さに加え、スポーツモデルのダンガンに搭載された量産車では世界初の5バルブエンジン、右側前だけ+左側前後の1:2ドア、現在のタントなどにも通じる全高が非常に高いトッポを設定

■1990年
・初代ディアマンテ/3ナンバー車が自動車税の改正などで買いやすくなったドンピシャのタイミングで登場した、リーズナブルな本格的な3ナンバーセダン
・初代GTO/FFベースの4WDで登場したアメリカンなスポーツカー

■1991年
・2代目パジェロ/SUVという言葉ができる前に出た、乗用車的なクロカン4WD
・初代RVR/現在のフリード+に通じるような2列シートミニバン。のちにオープンモデルやSUV的なスポーツギア、現在のSUVのスポーツモデルに通じるX系なども追加。

■1992年
・ランサーエボリューション/ラリーなどのモータースポーツで大活躍するランエボの始まり

■1994年
・デリカスペースギア/クロカン4WDとミニバンをドッキング
・FTO/よく回り質感の高い2ℓV6エンジン、当時のポルシェのティプトロマチックのようなゲートによるマニュアルシフトと賢いDレンジを持つAT「インベックスII」を搭載
・パジェロミニ/パジェロをそのまま軽サイズに縮小したようなクルマで大ヒット

■1996年
・ランサーエボリューションIV/リア左右輪の積極的なトルクベクタリングを行うAYCを搭載
・8代目ギャラン/量産車世界初の直噴GDIエンジンを搭載

 さらに商品の魅力以外でも、世界最小の1.6L、V6エンジン(4代目ミラージュ)、レーザーレーダーで先行車との距離を測り警告やエンジンブレーキを掛ける「ディスタンスコントロール」(現在の先行車追従型クルーズコントロールに通じる部分も。3代目ディアマンテに搭載)など、目を引く技術も多かった。

 これだけ注目される車や技術があれば、会社が勢い付くのもよくわかる。

ラリーで躍動したランエボと「箱根」を支えた三菱車

2000年に発売されたランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディション。ランエボを駆るマキネンのWRC 4連覇を記念して作られた

 そして、ふたつ目が「モータースポーツでの活躍」だ。

 12回もの総合優勝を飾ったパジェロでのパリダカールラリー。WRCではランエボが躍動し、ドライバーズタイトル4連覇+1998年のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。

 また、ミラージュは4世代に渡るワンメイクレースだけでなく、ジムカーナ、ラリーやダートトライアルといったライバルのシビック以上に幅広いステージで活躍。

 さらに、かつての三菱はラリーアートによる支援も全体的に手厚く、プライベーターも長年支えていた。

 そして、3つ目はプロモーションの上手さだ。

 2003年まで長年続いた箱根駅伝での先導車提供をはじめ(その後ホンダ、トヨタに移行)、1989年の石原プロモーション制作の刑事ドラマ「ゴリラ・警視庁捜査第8班」には、西部警察までの日産車に代わり、スタリオンと2ドア時代のエクリプスのガルイングなど当時の主力車種がほとんど登場(激突する白黒のパトカーや犯人車まで三菱車で揃えられていた)。

 また、ジャッキーチェーン氏の映画や、松任谷由実さんのコンサートの協賛などでも、一般の人が三菱自動車の名を聞いたり、三菱車を目にする機会も多かったように思う。

「今の三菱」には何が足りないのか?

アウトランダーPHEV。苦境に立たされている三菱だが、プラグインハイブリッド車をいち早く量産化するなど技術力は高い

 裏を返せば、今の三菱にないのは、こうした「良かった三菱自動車にあったもの」だと思う。

 「商品の魅力や技術」で見ると、2000年代以降、三菱車はもともとのDNAである“堅実さ”しか印象に残らない車が多く、インパクトがあったのは歴代ランエボ、eKワゴン(初代は清々しいシンプルさ、2代目はスライドドアの設定も印象的)、i-MiEVを含むi、デリカD:5、アウトランダーPHEV、4WD技術くらいしかなかったように感じる。

 「モータースポーツでの活躍」も現在ではほとんどイメージがなく、プロモーションに関しても広告以外で一般の人が三菱車をメディアで見る機会は少なくなった。

 クルマは高額商品なだけに、買う際には決め手となる強い魅力や何らかの華やかさ、イメージが必要だ。大メーカーではない三菱にとってこれらは一層重要だろう。

 加えて自動車メーカーにとって、新車を定期的に出すということも重要であり、エクリプスクロスまで4年間、新型車を出せなかったなど、三菱にとってここ数年八方塞がりになってしまったのは大変辛かった。

ホンダと三菱の差がここまで開いてしまった理由

今もシエンタと並ぶ人気車、フリードの初代モデル(2008年登場)。小型ミニバンの元祖・モビリオの系譜を引くホンダらしい一台だ

 ここまであげた「今の三菱自動車にないもの」が、そのままホンダとの差が広がった要因となっている。

 ホンダはここ20年、ストリームやフィット、フリードなど、時おりホンダらしいインパクトや新しさのある車に加え、世界的に確実に売れるアコードやシビックのような車も堅実に作ってきた。

 その一方で日本市場の動きにも対応し、軽自動車に注力するなどの時代に応じた変化も行い、順調に業績を伸ばしてきた。

 対する三菱は、ここ20年全盛期のようなインパクトや新しさを感じる車を、どういうワケかなかなか作れなくなってしまった。そこに不祥事も重なり「貧すれば鈍する」のような深刻な悪循環に陥ってしまったということだろう。

 厳しいなかにいる三菱ではあるが、アウトランダーPHEVの素晴らしさを見てもわかる通り、三菱自動車に力がないわけではない。

 今後三菱は、日産・ルノーとのアライアンスにより、オリジナル車の開発は難しくなる。しかし、そうしたなかでもデザインやコンセプト、走りの味付けなどでオリジナリティを保てる可能性は充分あるだろう。

 例えば、次期日産ジュークと三菱RVRが兄弟車なら、ジュークはスペシャリティでRVRはオーソドックスなコンパクトSUV、東南アジアで大ヒットしているコンパクトミニバンのエキスパンダーを両社で売るなら日産はファミリー向け、三菱はデリカD:5のようなSUVミニバンといった棲み分けは可能だ。

 三菱自動車には夢が詰まった、良い時期があった。そして、根強いファンも少なからず存在する。全盛期の勢いを取り戻すことは難しいとしても、強い分野の技術を活用すれば、復活の道は切り開ける。今後の展開に期待したい。

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