三菱とホンダはなぜここまで差が開いたのか? 30年でシェア大逆転!!

ラリーで躍動したランエボと「箱根」を支えた三菱車

2000年に発売されたランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディション。ランエボを駆るマキネンのWRC 4連覇を記念して作られた

そして、ふたつ目が「モータースポーツでの活躍」だ。

12回もの総合優勝を飾ったパジェロでのパリダカールラリー。WRCではランエボが躍動し、ドライバーズタイトル4連覇+1998年のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。

また、ミラージュは4世代に渡るワンメイクレースだけでなく、ジムカーナ、ラリーやダートトライアルといったライバルのシビック以上に幅広いステージで活躍。

さらに、かつての三菱はラリーアートによる支援も全体的に手厚く、プライベーターも長年支えていた。

そして、3つ目はプロモーションの上手さだ。

2003年まで長年続いた箱根駅伝での先導車提供をはじめ(その後ホンダ、トヨタに移行)、1989年の石原プロモーション制作の刑事ドラマ「ゴリラ・警視庁捜査第8班」には、西部警察までの日産車に代わり、スタリオンと2ドア時代のエクリプスのガルイングなど当時の主力車種がほとんど登場(激突する白黒のパトカーや犯人車まで三菱車で揃えられていた)。

また、ジャッキーチェーン氏の映画や、松任谷由実さんのコンサートの協賛などでも、一般の人が三菱自動車の名を聞いたり、三菱車を目にする機会も多かったように思う。

「今の三菱」には何が足りないのか?

アウトランダーPHEV。苦境に立たされている三菱だが、プラグインハイブリッド車をいち早く量産化するなど技術力は高い

裏を返せば、今の三菱にないのは、こうした「良かった三菱自動車にあったもの」だと思う。

「商品の魅力や技術」で見ると、2000年代以降、三菱車はもともとのDNAである“堅実さ”しか印象に残らない車が多く、インパクトがあったのは歴代ランエボ、eKワゴン(初代は清々しいシンプルさ、2代目はスライドドアの設定も印象的)、i-MiEVを含むi、デリカD:5、アウトランダーPHEV、4WD技術くらいしかなかったように感じる。

「モータースポーツでの活躍」も現在ではほとんどイメージがなく、プロモーションに関しても広告以外で一般の人が三菱車をメディアで見る機会は少なくなった。

クルマは高額商品なだけに、買う際には決め手となる強い魅力や何らかの華やかさ、イメージが必要だ。大メーカーではない三菱にとってこれらは一層重要だろう。

加えて自動車メーカーにとって、新車を定期的に出すということも重要であり、エクリプスクロスまで4年間、新型車を出せなかったなど、三菱にとってここ数年八方塞がりになってしまったのは大変辛かった。

ホンダと三菱の差がここまで開いてしまった理由

今もシエンタと並ぶ人気車、フリードの初代モデル(2008年登場)。小型ミニバンの元祖・モビリオの系譜を引くホンダらしい一台だ

ここまであげた「今の三菱自動車にないもの」が、そのままホンダとの差が広がった要因となっている。

ホンダはここ20年、ストリームやフィット、フリードなど、時おりホンダらしいインパクトや新しさのある車に加え、世界的に確実に売れるアコードやシビックのような車も堅実に作ってきた。

その一方で日本市場の動きにも対応し、軽自動車に注力するなどの時代に応じた変化も行い、順調に業績を伸ばしてきた。

対する三菱は、ここ20年全盛期のようなインパクトや新しさを感じる車を、どういうワケかなかなか作れなくなってしまった。そこに不祥事も重なり「貧すれば鈍する」のような深刻な悪循環に陥ってしまったということだろう。

厳しいなかにいる三菱ではあるが、アウトランダーPHEVの素晴らしさを見てもわかる通り、三菱自動車に力がないわけではない。

今後三菱は、日産・ルノーとのアライアンスにより、オリジナル車の開発は難しくなる。しかし、そうしたなかでもデザインやコンセプト、走りの味付けなどでオリジナリティを保てる可能性は充分あるだろう。

例えば、次期日産ジュークと三菱RVRが兄弟車なら、ジュークはスペシャリティでRVRはオーソドックスなコンパクトSUV、東南アジアで大ヒットしているコンパクトミニバンのエキスパンダーを両社で売るなら日産はファミリー向け、三菱はデリカD:5のようなSUVミニバンといった棲み分けは可能だ。

三菱自動車には夢が詰まった、良い時期があった。そして、根強いファンも少なからず存在する。全盛期の勢いを取り戻すことは難しいとしても、強い分野の技術を活用すれば、復活の道は切り開ける。今後の展開に期待したい。

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