世界で主流の右側通行と左側通行はどのように普及した?
では、海外では「右側通行」が主流で、英国など一部の国が「左側通行」となっているのか。その背景には、欧州の歴史と馬車が深く関係している。
16世紀の頃からフランスの御者(※馬を操る人)は、馬車ではなく、それを引く左側の馬に跨って操っていた。御者が道路中央側となる右側通行の方が安全に馬車を運行できたため、右側通行が徐々に浸透。それを1851年にルイ・フィリップ王が法制化した。
一方、左側通行のイギリスでは、御者が馬車の中央にある御者台に乗り操った。その場合、人は右利きが大多数であるから、右側の馬の方が手綱で操りやすい。そこで同様に安全面から左側通行となったという。それが法制化され、自動車社会となった現在まで引き継がれたわけである。
右側通行の普及は、フランスの繁栄によるもので、欧州全体へと広がり、また統治下に置かれた国もこれにならった。イギリスも統治した国々などで左側通行を採用させた。この流れが、右と左という二つの勢力を生んだ大きな原因となった。
ただ、タイのように独自に左側通行を選んだ国も見られる。また近年でも2009年にサモア独立国のように右側通行から左側通行に改めた例も……。サモアでの理由は、オーストラリアなどの隣国から右ハンドル車を入手しやすいなどコスト面を考慮したものであるようだ。
では、クルマとして、右ハンドル車と左ハンドル車どちらが良いのか。かつて左ハンドル車をメインとする海外メーカーの右ハンドル車は、出来が悪いと評価されることもあった。
また、MT場合、ペダルレイアウト的に左ハンドルの方が踏みしろの大きいクラッチペダルのレイアウトが有利とも言われた。
しかしながら、技術進歩により、かつてのように構造上の問題は、ほとんど聞かれなくなった。ただボタンレイアウトやサイドブレーキの位置など、左ハンドル車を前提とした設計が現在も見られる。
それでも、どちらが優れるかというよりも、運転する国の通行区分にあったハンドル仕様を選んだ方が、運転しやすいことは間違いないといえる。
日本での左側通行の決定に大きな根拠がなかったというのは驚愕の事実である。ただ、決定に携わった松井茂は、役人として警察や消防、行政にも深くかかわった人物だけに人々の暮らしを見て、これをベターな判断としたのかもしれない。
◆世界の右側通行と左側通行
世界には右側通行と左側通行を採用している国があり、2018年現在は右側通行採用国が多数を占める。主な右側通行と左側通行の採用国は以下のとおり。日本は左側通行を採用するが、沖縄では大戦後の1978年まで右側通行を採用していた歴史もある。
・右側通行を採用する主な国…北米(米国、カナダ、メキシコ等)、欧州(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン等)、アジア(中国、韓国、台湾、ベトナム、サウジアラビア等)、ロシア、南米(ブラジル、ペルー等)など
・左側通行を採用する主な国…英国と旧英国領(香港等)、オーストラリア・インド・南アフリカなどの英連邦加盟国、日本、タイなど
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