■国内販売を開始
ヨーロッパS2は初期モデルの不都合を是正すること、英国内でも発売すること、がチェンジのポイントとなった。
それまで左ハンダーのみであったものが右ハンダーも設定され、ブーイングのもとであったサイドウィンドウは開閉可能どころか、一気にパワー・ウィンドウ化された。シャシーは脱着可能(初期型は固定されていて修理不能だったのだ)に、シートはスライド調節可能に、すべてが改善された。
しかし、ヨーロッパの評判はいまひとつであった。ロータスはやはり小型ながら高性能であることが望まれたのだ。そこでふたたびチェンジを受け、ヨーロッパTCへと進化する。1971年9月、それまでのルノー製ユニットに代えて「TC」の名の示す通りロータスお得意のツウィンカム・エンジンが投入される。
エランなどでお馴染みの直列4気筒DOHC1558cc、105PSを搭載、ひと回り性能をアップしてロータスらしさを主張した。
ボディ周りもキャビンから後ろの部分をリスタイリングした。ほとんど絶望的といわれた斜後方視界の改良を図ることもあって、ひと回りすっきりとしたサイドヴュウになった。
■最終にして最強のヨーロッパ
それも束の間、翌1972年8月にはさらなるチェンジを受けて、ヨーロッパは最終形、ヨーロッパ・スペシャルになった。
F1レースでの活躍を反影して、艶やかなピンストライプを入れた「JPSカラー」に象徴されるように、派手な出立ちのヨーロッパは、その独特のスタイリングと相俟って、大きな存在感の持ち主に仕上がっていた。
そう、超弩級スーパーカーに間にあっても埋没してしまわないだけの存在感。それを巧みに取込んで、ブームでも主役に近いポジションを得た、というわけだ。
ヨーロッパ・スペシャルは「ビッグ・ヴァルヴ」と愛称される126PSツウィンカム・エンジンを搭載し、ミドシップであることも手伝って、エランに勝るとも劣らない性能を主張したのだった。
振り返ってみるとよく解るのだが、そのころ、ロータス社はいろいろな規制に対応することもあって、大きく姿勢を変えようともがいていた。ヨーロッパをさらに推し進めて、本当のスーパーカー級のロータス・エスプリを筆頭に、二代目エリート、エクラといった、ひとクラス上のラインアップを揃えるのだ。
しかし、ロータスがロータスらしさを取り戻したのは、やはり小型軽量のエリーゼから。ヨーロッパは、そんな時代の変わり目、ピリオドを打つ役目も果たしていたのだった。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
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