地方にも都市部にも適さないBEV
一方で、BEVならではの魅力があるのも事実だ。ガソリン車やハイブリッド車では得られない、浮遊したような運転感覚はとても心地よく、「もうガソリン車には戻れない」という方もいるほど。筆者もリーフの、路面を滑っていくかのようなドライブフィールは、忘れられない。
自宅で夜間、充電ができる設備を導入し、片道50km程度の通勤通学や、近所の買い物で使う用途であれば、BEVの良いところを最大限満喫できるだろう。近所の買い物程度につかう「チョイ乗り」であれば、むしろ内燃機関車よりもBEVのほうが向いている。
ただ、自宅に充電設備が導入しやすい戸建ての多い地方では、街中の充電設備が少なく、街中に充電設備が充実している都市部では、マンションに住む人も多いため、充電設備が導入しにくい。地方でも都市部でも、BEVでのカーライフには、困難がつきまとう。
特にロングトリップはBEVにとって鬼門だ。充電スポットの位置を事前に確認するのはもちろんのこと、先客がいた場合のバックアップも立て動く用意周到さがないと、ストレスフルなドライブになってしまう。もちろん、人によって感じ方は変わってくるだろうが、「慣れれば大丈夫」という問題でもなく、少なくとも筆者は、1年あまりのリーフライフにおいて、利便性の面では、最後まで不満だった。
効率を求める現代において、BEVの普及は難しい
日産が初代リーフを発売したのは2007年のこと。初期型モデルの航続可能距離のカタログ値は、180kmほどであった。実際には、130~150km程度が実力であったため、戸惑った方も多かっただろう。世間から航続距離の少なさを指摘され続けた日産は、2代目リーフに設定した上級グレード「e+」で航続可能距離458kmを実現。
一方で日産は、充電インフラに関しても整備を積極的に進め、すべての日産ディーラーに充電器を設置し、充電中は、ディーラーの中でドリンクを振る舞う(無料)。もちろん、お付き合いのある店だけではなく、出かけた先の日産ディーラーでも、「リーフ充電させてもらっています」と伝えれば、快く迎えてくれる。2021年6月時点の全国の急速充電器は約7900基。そのうち、およそ1/4が日産ディーラーだという。
トヨタも、2025年を目途にすべてのトヨタ系ディーラーに急速充電設備を設置すると発表しており、充電設備については今後増えてくることが期待できるが、BEVは充電に時間がかかるため、それでもまだ十分な量とはいえない。
また、BEVの課題はそれだけではない。繰り返しになるが、何事にも効率が求められる現代において、5分で100%回復できる内燃機関車の利便性になれたユーザーが、30分かかっても100%の回復は難しいBEVのカーライフに満足してくれるのか。BEVは、少なくとも現状では内燃機関車の代替になることは難しく、それを実現するには、インフラ設備の一層の充実はもちろんのこと、技術のブレークスルーやカーライフスタイルの見直しも求められると思う。BEVの普及には、まだまだ時間がかかりそうだ。
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