2021年7月に2代目へフルモデルチェンジしたアクア。「どんな人にも、どんな時でもいい」をキャッチフレーズに、大きな進化を遂げたのだが、初代ほどの元気がない。
フルモデルチェンジから現在まで、乗用車ブランド通称名順位の月別順位でも首位を取れず、中段に沈むことも多い。かつての人気車アクアはどこへ行ったのか。アクアが苦戦する理由を考えていく。
文/佐々木 亘
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■初代アクアに比べると目立つPR不足
初代アクアの登場は、非常に衝撃的なものだった。販売開始から1カ月で月間販売目標の10倍におよぶ12万台の受注を記録する。アクアのCMを見ない日はないほど、毎日さまざまな時間帯でPRが行われていた。認知度は急激に高まり、その後も販売台数は高い水準で維持されている。
モデル中期から末期になると、CMの内容をがらりと変わった。「千本桜」や人気RPG「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」の曲を使い、印象に残るCMづくりで認知度をキープ。
若年層から30~40代のファミコン世代にスポットを当て、アピールの仕方や売り方にも工夫があったように見える。最終型では鬼滅の刃のオープニング曲「紅蓮華」をリミックスして使用し、若い世代への訴求をさらに強めた印象だ。
対する現行型のCMは、発表当初には目にすることがあったが、他車種のCMに比べると、放送回数は少ない。今は、カローラクロス、ノア、ハリアーなどが目に留まり、あとはトヨタイムズの印象が強く残る。余程のアクアファンでない限り、あの「いい」CMを覚えている人は少ないのではないだろうか。
店頭でのPRも少ない。販売店に立つ横断幕や旗は、ノア/ヴォクシー、SUVを主にしたもので、展示車両でもアクアの姿はほとんど見なくなった。人目から、どんどんと遠ざけられていくアクア、売れ行きが芳しくないのも頷ける。
■ハイブリッド専用車であることが足かせに
トヨタラインナップでは、すでにハイブリッド設定のないクルマを探すほうが難しい。かつてはプリウス、アクアが代表格であったハイブリッド車は、ほぼ全車種に設定され、さらにガソリンモデルが併売されている。
現在トヨタを引っ張る人気車種は、ヤリス(ヤリスクロス)、ルーミー、ライズ、アルファード、ノア/ヴォクシー、ハリアーと言ったところだろう。こうした販売台数トップ10の常連車種に混ざって、時々アクアが顔を出す程度だ。
この中で、ハイブリットの設定がないのはルーミーのみ、逆にハイブリッドだけなのはアクアだけとなる。そのほかのクルマはすべて、ハイブリッド(ライズのe-SMARTハイブリッドを含む)とガソリンの併売車種だ。
ルーミーに関しては、価格の安さと機能的で広い室内空間が、若年層と高齢ユーザーにズバッと刺さっている。特徴がわかりやすく、ユーザーへ訴求しやすいクルマだ。
対してハイブリッドだけのアクアは、ヤリス以上カローラスポーツ未満という車格を生かせず、両者の間に埋もれてしまっている。選択肢が少なく、売り手側もターゲットがわかりにくいと敬遠気味だ。
ハイブリッドにこだわり、ハイブリッドであることがアクアの価値であったが、今ではそれが大きな足かせとなってしまったのだろう。
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