走りにも 安全性にも カッコよさにも直結!!! 「プラットフォーム」解体新書

■昔のプラットフォームと比べて、性能はどれほど向上したのか?

前述のとおり、いまクルマのボディを設計するにあたって最も重視されるのは衝突安全性だ。それも、法規制をクリアする最低限の性能ではなく、各国で実施される衝突試験アセスメントで上位評価を受けるのがマスト。そこがボディ設計者の主戦場といっていい。

この辺を各メーカーのエンジニアに聞くと、共通して聞かれるのが「既存のクルマの改良では限界がある。トップを狙うならプラットフォームから変えさせてもらえないと……」という言葉だ。

トヨタのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)。プラットフォームという枠を超えて、新しいトヨタのクルマ造りの基盤となる概念。シャシーとしては一昨年の50プリウスから始まって、70カムリまで広がっているが、エンジンやトランスミッションはもちろん、工場の生産技術までを含む広範なアーキテクチャ共通化を目指している。いまや世界的に有名になった“トヨタ式生産システム”をこれで上書きするくらいのスケールで、壮大な改革が始まっている模様。採用車種はプリウス、C‐HR、カムリ、新型クラウンなど

つまり、最新の構造シミュレーションや高抗張力鋼板*の進化など、この分野にはいま「伸び代がある」ということ。

裏返せば、新しいプラットフォームを採用したクルマは、少なくとも衝突安全性能に関しては旧モデルを凌駕する、そう考えていいわけだ。また新しい構造設計や材料技術の進化を、車体の軽量化に向けるという考え方もある。

典型的な例はスズキのHEARTECT(以下ハーテクト)だが、これによってスイフトで120kgの減量に成功するなど、全社を挙げて軽量化に取り組んでいる。

スズキのHEARTECT(ハーテクト)。いまどきの新プラットフォームには珍しく、衝突安全性能と同じくらい軽量化を重視しているのが特徴だ。軽のアルトで140kg減達成というのは驚異的な数字。誰でもわかるくらい、走りに軽快さが生まれている。基本アーキテクチャをここまで軽量化に振るという決断は、ニッチの王者を狙うスズキならでは。コンパクトカーや途上国マーケットでは、大きな強みになること間違いなしだ。採用車種はワゴンR、スペーシア、アルト、スイフトなど

一般的に、衝突強度を高めようとするとどうしてもボディは重くなりがちだが、重くなると衝突エネルギーが大きくなってさらなる強度アップが必要という悪循環に陥る。

また、J-NCAPなどのアセスメントで高評価を得るには、ボディの性能も重要だが、エアバッグの数や自動ブレーキなどの先進運転支援装備に依存する部分も大きい。こういった観点から、スズキはボディをガチガチに固めて重くするよりも、軽量化重視のボディ造りを選択したようだ。

もちろん、これにはインドに代表される途上国で販売比率が高いというスズキのお家の事情もあるのだが、軽快でスポーティに走るという意味では軽量化は大いに魅力的。

スズキがこういう独自路線を選ばなかったら「プラットフォームを一新するとこんなに軽くできるんだ!」という新鮮な驚きはなかったわけで、そういう意味ではプラットフォームの重要性に別な角度から光を当てた貴重なトライといえる。

スズキ肝いりのプラットフォーム「ハーテクト」を採用したスイフトスポーツ。その走りの評価は高い

次ページは : ■プラットフォームがもたらす走りへの影響とは?

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