■黙って言うことを聞け、お前はクルマを売ればそれでいい
お客様は神様だから、何を言ってもいいわけではない。ただ、そんなことはお構いなしに、様々な言葉を浴びせかけられるのが、全国の営業マンたちだろう。
もちろん来店していただくお客様の9割5分は、良いお客様である。しかし、残りの5%の中に、自称「神様」が存在するのだ。
自称神様の言葉は辛辣だ。中でも、値引きの希望やサービス品の願いが届かなかったときに言われた言葉が衝撃的だった。
「お前はクルマの販売員なんだから、黙って俺の言うとおりにクルマを売ればいいんだよ。生意気言ってないで、これで注文書作れよ、バカが」
年に何回か、こうした言葉を受ける機会がある。パワハラ、モラハラなどと言われるが、これは立派なカスタマーハラスメントと言えるだろう。
■カタログと燃費が違うから返品だ
購入したクルマが、想像と違うと言って、すぐに返品だと騒ぐ人も多い。「色のイメージが違う」「運転がしにくい」「燃費がカタログ通りではない」など、その返品の理由は様々だ。
電話対応ならまだいいが、直接ショールームへきて、「クルマを置いていくから、今すぐ支払ったお金をここに用意しろ」と居座られたのには参った。この返品理由も、クルマの燃費が悪いからというもの。
明らかな不良が原因であれば対応するが、多くはクルマが正常な状態で文句を言われる。この場合は対応が出来ない。自動車においてはクーリングオフ制度がないため、通販の商品のように、期間内に返品すれば返金されるというものではないことを、読者の方には覚えておいてほしい。
また、想像と違う、気に入らないという感情は、人を恐ろしいものへと変えてしまう。
ある程度の期間、付き合いがあったオーナー宅で商談していた時の事だ。下取りに出す予定のクルマを査定し、その金額を伝えたところ、表情が一変した。
おそらく想像よりもかなり低い金額だったようで、睨みつけられながら「なんだ、その額は、なめてんのか。お前の家族いるんだろ、どこだよ、住所言え。今から行って、やってやるよ」と脅された時には正直参った。
仕事しているだけなのに、家族にまで手を上げられては、たまったものではない。脅迫というか、ほぼ暴力。この件では、営業所へ電話で確認するフリをして、ボイスレコーダーを動かし、関係機関に相談した。
商談という時間がかかる作業をする中では、特別に怖い人でなくても、普通の人が豹変するケースが多い。商談は人と人の交渉だ。脅してもゆすっても、いい結果は出ないだろう。営業マンからすると、自称「神様」以外の方々の方が、神様に相応しい人だと思ってしまう。
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