■体に合わないシートベルトは危険
男児は小学校3年生ということで、年齢は8-9歳と推測される。小学3年生男児の平均身長は文部科学省の学校保健統計調査結果によると(令和3年7月公開)8~9歳男児の平均身長は130cm前後である。
シートベルトが安全に着用できるまであと20cm近くも身長が足らない。
横転した際に肩ベルト(斜めのベルト)から体がすり抜け、衝撃で腰ベルトからもすり抜けて、車外に投げ出された可能性がある。シートベルトが安全に使用できるのはクルマのタイプにもよるが最低でも145cm以上。子どもの頭身を考えれば身長150cmを超えてからが望ましいとされる。
エスティマの助手席にシートベルトの高さを調整するアジャスターがついていたかは定かではないが、最も低い状態にしていても身長130cmには対応できないだろう。
ではどのようにシートベルトを使っていれば良かったのか。
それは、「体に合ったジュニアシートを使ってシートベルトの高さを適正な位置にセットすること」である。
日本では2000年4月1日以降、運転者に対して「6歳未満の幼児を乗せる場合には保安基準を満たしたチャイルドシートを使用する」ことが義務付けられるようになった。
では6歳を過ぎたらチャイルドシートは不要なのか。もちろんそんなことはない。2008年6月1日には後席シートベルトの着用が義務付けられるようになり、クルマに乗る際は(配送業など一部の例外を除いて)全席でシートベルトが必須となった。妊娠中の女性のおいても2008年11月に「シートベルト教則」が改訂されてからは教習所の学科教習でも「妊娠中のシートベルト着用の重要性」を学んでいるはず。
正しい着用方法とは、鎖骨と両側の腰骨を通すことで、おなかの丸みを避けて着用する。つまり腰ベルトがおなかの上にかからないようにつけるということである。
■シートベルトは身長何cm以上で安全に使用できるのか?
車両シートベルトが正しく着用できるのは身長145~150cmを超えてからである。筆者自身がこれまで自動車メーカー各社に確認しているが、「クルマのシートベルトが安全に使えるのは身長何センチ以上ですか?」という質問に対して、
「身長145cm以上で安全の確認をしています」
「現在、最も小さな人体ダミーは「AF05」(成人女性の5%に入る体格という意味)を使っています。AF05は身長150cmです」
などの回答がそろった。
クルマにもよるが、後部座席のシートベルト(肩ベルトが出てくる位置)はピラーから出るものと、シート本体の肩部分から出てくるものの2種が主流だが、ピラーからとシート本体からでは当然、高さが異なる。スポーツカーやクーペタイプなど車高の低いクルマの中には身長140cm前後からでも後席ベルトが安全に使えるクルマもあるが、ミニバンなどピラーや天井から出るベルトの場合は145~150cm以上を想定しているといっていいだろう。
その証拠に日本の自動車メーカーが設定する純正ジュニアシートは2016年の時点で全社が身長150㎝まで使えるジュニアシートを設定している。(※助手席でジュニアシートを使う際には万が一の際、エアバッグの衝撃を避けるためシートを最後部まで下げてから使用のこと)
2016/1/25 交通政策審議会 第3回 技術安全WGの資料を見てみよう。
各社身長100cm~150cmまで使える学童用シート(ジュニアシート)を純正オプションとしてラインナップしている。これは言い換えれば、「身長150cmを超えるまではシートベルトだけでは危険、ジュニアシートを使ってください」というメーカーからのメッセージだ。
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