【国交省へ届け!!】小学生がシートベルトしていても車外へ投げ出された理由と安全に使える条件とは

■座面だけのジュニアシート使用にも実は決まりがある

 学童用も幼児用もヘッドレストが干渉する取り付け方はNG この場合はクルマ側のヘッドレストを抜いて装着すべき
 学童用も幼児用もヘッドレストが干渉する取り付け方はNG この場合はクルマ側のヘッドレストを抜いて装着すべき

 ジュニアシートというと、多くの人は座面だけのブースター(かさ上げ)シートを思い浮かべるだろう。また近年は座面部分がなく、肩ベルトの高さを調整して(肩ベルトの支点を低くして子供の体に合わせる)使用するタイプも出てきている。いずれも、背もたれやヘッドレストが存在しないタイプだ。

 この「座面だけ」のジュニアシートは2017年2月9日以降にECE R44/04(日本が採択している国連欧州基準)の認証を受ける製品に関しては、身長125cm、体重22kgを超えてからの使用が義務付けられるようになった。

いわゆる「ジュニアシート」
いわゆる「ジュニアシート」

 それ以前に認証を受けたものは、体重15kg~使用できるとされているが、なかには基準が変わる直前に滑り込みで認証を受けた製品も存在する。

 しかし、ここで考えてみてほしい。座面だけのシートに対する安全基準がなぜ厳しくなったのか。身長125cm、体重22kgという体格での使用を「新たに」追加して義務付けた理由は何か。

 それはチャイルドシートの安全性を審査する国際機関において、「身長125cm、体重22kg以下で背もたれのない座面だけのジュニアシートを使用するのは危険」という結論が出たからである。確かに背もたれなしのブースターシートは値段も2000円前後からありコンパクトで場所を取らない利点はある。しかしそれらは、身長125cmを超えてからの使用となる。

 なお、古い基準で認証を得ているブースターシートの中には「体重15kg以上、3歳以上で使用できます」と書いているものもある。本当に子どもの安全を考える良心的なメーカーなら、古い基準で認証を受けたブースターシートでも、「身長125cm、体重22kg以上で使用してください」と書いてある。

■ジュニアシートを使っていて亡くなった5歳男児の例

 ニュースでも報道されたが、昨年(2021年)8月末、福岡県で安全基準(ECE R44/04)に適合したジュニアシート(座面だけのブースターシート)を使用していたにも関わらず、助手席に乗っていた5歳男児が死亡する痛ましい事故が起きた。男児は助手席に乗っており、家族が運転する軽自動車が前車に追突した際の衝撃で腰ベルトがおなかに食い込み、結果的に亡くなってしまった。

 事故の数日後、対応した警察や救急隊員にその時の様子を聞くことができた。男児は救急車が到着した時には意識もしっかりしており、周囲の人たちによってクルマから降りて歩道に座っていたという。しかし、その後、救急搬送される間に容体が急変し病院に搬送2時間後に死亡が確認されることになった。

 福岡県警から聞いたその時の状況は以下。

「エアバッグによる受傷はなく腹部に内出血があった。内臓が傷ついて出血したと報告されている。使っていたジュニアシートは座面だけで背もたれのないブースタータイプ。着座状況やシートスライドの位置などは不明。ブースターシートの銘柄は非公表。原因は本来、両腰骨にかけるべきシートベルトの腰ベルトがおなかにかかっていたため、腹部が圧迫されて内蔵を損傷した。」

 亡くなった男児の身長は定かではないが、5歳男児の平均身長は110cm前後であり、座面だけのブースターシートが使用できる身長125cmに15cmも足らない。腰ベルトがおなかにかかっていたという事実から推測するにおそらく、シートをリクライニングしていたか、お尻が前にせり出したような状態で着座していた可能性もある。

 ベルト固定のジュニアシートは1本のシートベルトでジュニアシートと子どもの体を一緒に拘束する形となるため、子どもの姿勢が崩れると衝撃に耐えられる正しい着座位置を保てない場合も多々ある。

「座面だけのジュニアシートは身長125cm、体重22kgから使用」。

 この安全基準(国連協定規則ECE R44/04 S11)は日本も採択しているジュニアシートのルールで、これらはもっと周知されなくてはならないはずだが、国交省もJAFもこのルールには公式サイトなどでまったく触れていない。

 そればかりか国交省のチャイルドシートコーナーでは、学童用ジュニアシートは座面だけのブースターシートであり、「身長135cm以下」とわざわざ恐ろしい数字が書いてある。おそらく旧基準と思われるが、国交省がこのように書いてあればユーザーとしては「ジュニアシートは身長135cmまでしか使えない。それを超えたらシートベルトを使う」と考える可能性もあるのではないか。

 筆者は数年前からこの件を国交省の担当部署に何回も確認してきたが、結局直っていない。子どもの命をなんだと思っているのだろうか。

国土交通省公式サイト「チャイルドシートコーナー」より引用
国土交通省公式サイト「チャイルドシートコーナー」より引用

 ちなみに上記画像の説明だが「乳児用」「幼児用」も最新の安全基準とは異なる記述がある。

 最新の安全基準であるECE R129(i-Size)に適合するチャイルドシートの場合、「乳児用」では身長76cmくらいまたは生後15か月までは後ろ向きで使用し、「幼児用」として前向きにするのは身長76cmを超えてからが必須条件となる。そして「学童用」は年齢にかかわらず身長150cmまで使用できるものが安全とされている。

 これから夏休みシーズンとなり、子どもや孫、親戚の子どもたちをクルマに乗せる機会も増えると思うが、事故はいつ起こるかわからない。子どもの体にあったチャイルドシートを装着させるのがドライバーの義務である。「取り締まりで捕まらないように」という理由ではなく、かけがえのない愛する我が子や孫をクルマに乗せるときには、年齢ではなく、体格に合った適正なチャイルドシートを使って子どもたちを守ってあげて欲しい。

【「安全に使用できる最新基準(UNECE R129/03)を満たしたジュニアシート」の例】

コンビ「ジョイトリップアドバンスISOFIX エッグショック SA」
コンビ「ジョイトリップアドバンスISOFIX エッグショック SA」

◎コンビ・ジョイトリップアドバンスISOFIX エッグショック SA(2022年8月上旬発売予定)/日本メーカーとしては珍しく身長150cmまで安全に使える最新安全基準R129/03に適合したジュニアシート(幼児学童兼用)
使用期間:チャイルドモード/身長76cmかつ月齢15カ月以上~105cmまで
※チャイルドモードでは、体重20.0kgを超えるお子さまには使用できません。
ジュニアモード/身長100cm~150cm(参考:1才頃~11才頃)

BRITAX ROMER「ADVANSAFIX i-SIZE」
BRITAX ROMER「ADVANSAFIX i-SIZE」

◎ADVANSAFIX i-SIZE 最新安全基準R129(i-Size)適合。月齢15ヶ月から12歳まで世界最高峰の安全性と快適性を提供するBRITAX ROMER最新作
対象身長:76cm〜150cm
対象年齢:月齢15ヶ月~12歳頃

【画像ギャラリー】大変なのはわかるけど…チャイルドシート/ジュニアシートは「正しい使い方の知識」が必要な安全装備!!(9枚)画像ギャラリー

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