■なくてもよさげなクルマにも装着され、もはやリアワイパーはファッション?
だが同時に、「でも、それだけが理由ではないのでは?」ともにらんでいるのだ。
例えばトヨタ C-HRというSUVである。
ご存じのとおり、トヨタ C-HRはSUVのくせにリアウィンドウが非常に寝ていて、ほとんどクーペ的である。これだけ角度的に寝ていれば、上記1の理由に基づき、C-HRのリアウィンドウに付着した雨は走行中の気流によって後方に吹き飛ばされそうなものだ。
まぁ2の「泥の巻き上げを防ぐトランクスペース」がC-HRにはないわけだが、それでもこれだけリアウィンドウが寝ていれば、そこもなんとかなってしまいそうな予感はある。あくまで予感だが。
つまり、「C-HRはリアワイパーなしでも(たぶん)大丈夫」ということになるわけだが、それでも、トヨタ C-HRにはリアワイパーが全車に標準装備されている。
これはいったいどういうことなのか?
■「セダンにもリアワイパー」という頑固一徹なスバルのクルマたち
そしてスバルのセダンである。
今やリアワイパーが全車標準装備となっているセダンはスバル インプレッサG4とWRX S4のみだが、この2車にしても前述1、すなわち「リアウィンドウが寝ている」ということと前述2の「トランクがあるから泥を巻き上げにくい」という事実はある。
そうなれば前述3の「空力(燃費)が悪くなるからリアワイパーは付けません」という方策を取るほうが理にかなっているはず。燃費的には不利な水平対向エンジン搭載車だけに、空力にはこだわりまくるべきだが、それでもスバルのセダンはリアワイパーを標準装備する。
これについては「スバルのクルマは積雪地帯で使われることが多いため、降雪時の視界確保には並々ならぬ力を入れているから」と説明される場合が多く、まさにそのとおりではあるのだろう。
が、しかし「積雪地帯で乗られているセダンはすべてスバル車である」という事実はまったくないため、「スバルのクルマは積雪地帯で使われることが多いから」という説明も、現実の一部しか説明できていないのである。
では結論として、最近の「スバル以外のセダン」にリアワイパーが装着されていない理由は何なのか? これは逆に言うと、なぜスバルのセダンにはいまだリアワイパーが付いているのか? という話でもある。
もちろん、それは冒頭付近で示した「セダンのリアウィンドウはそもそも水滴が流れやすいから」「セダンにはトランクがあるゆえ、そもそも泥汚れがリアウィンドウに付きにくいから」「付けると空力特性が悪くなり、燃費が悪化するから」というのが、スバル以外の各社がセダンのリアワイパーを基本的には省略した理由だ。
■オシャレで付くクルマもあれば実用一辺倒で付くクルマもある
しかしなぜ、スバルは省略しないのか?
答えは、スバルは「おしゃれ」という概念を重要視はしていないからである。
セダンは、繰り返してきたとおりの理由によりリアウィンドウが汚れにくい。そのため、リアワイパーがなくてもなんとかなる。
だがそれは「なんとかなる」というだけの話で、大雨の高速道路や大雪が降る一般道を走るのであれば、セダンといえどもリアワイパーはやっぱりあったほうがいい。安全に寄与する。
だが――シュッとしたなめらかなフォルムを備えるセダンのリアウィンドウ下部にリアワイパーがボコッと付いていると、繰り返してきた空力関係だけでなく「見栄え」も悪くなる。なんとなくダサくなるのだ。
だがスバルは「ダサいダサくないうんぬんより、よく見えることのほうが大事でしょ!」と言ったかどうかは知らないが、まぁそのような意味合いで、意地でもセダンのリアワイパーを省略しないのである(たぶん)。
このあたりのことをどう感じるかが、スバル車を好むかどうかの分かれ目なのだろう。ちなみに筆者はスバルのそのへんが好きで、スバル車に乗ってますけどね。
なお、本稿の途中で登場したリアウィンドウが極度に寝ているSUV「トヨタ C-HR」にわざわざリアワイパーが付いている理由は、「そのほうがカッコいいから」というのもあるはずだ。
全体的にややガンダム風デザインとなるC-HRのリアウィンドウ付近は、ワイパーなしでツルッとしているより、ワイパーありでギザっとしているほうが、なんとなく似合うのである。
【画像ギャラリー】ともに絶滅危機!? 21世紀に入って激減してしまったセダンとリアワイパー装着車に迫る(7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方