■「レビン」「トレノ」の魅力
セリカに遅れること1年半、1972年3月にカローラ「レビン」は登場した。同時に、姉妹モデルであるスプリンターにも「トレノ」の名前で追加される。レビン(Levin)は英語で稲妻、トレノ(Trueno)はスペイン語で雷鳴を意味することばだ。
セリカGTも人気だったが、そのセリカよりもひと回り小型で軽量なボディに115PSのエンジンは大きな魅力だった。特にセリカのスタイリングや車格を必要としない、モータースポーツを目指す人びとには注目の的になった。
ホモロゲイション・モデルなどといわれるのもそれ故である。当時、若者はスタイリングからセリカGTを選ぶけれど、その素性を見抜いたヴェテランや「通」はレビン/トレノ、といわれたものだ。
登場したカローラ・レビン、スプリンター・トレノは基本的にはそれぞれの2ドア・クーペそのものであったが、幅広のタイヤ装着を見越して、前後にオーヴァフェンダを追加。じっさいにタイヤは当時としては幅広の70タイヤが5Jホイールに組合わされていた。
室内もぬかりなく、電流、油圧、油温計を追加して6連のメーターとしたほか、コンソールボックスも設けられたり、フートレストが追加されるなど、「通」好みを強調した。
レビンとトレノはわずかにフロントグリル、サイドのエア・スクープ、テールランプ部分が異なるだけで、文字通りの双児車であった。またレギュラー・ガソリン仕様、110PSエンジン搭載車も用意されたのは時代を物語っている。
マイナーチェンジが施された1973年4月、レビンJ/トレノJなるモデルが追加される。
人気のレビン/トレノにあやかって、その廉価版が登場したのだ。「J」はジュニアの頭文字で、なんのことはない、2T-Gエンジンに換えて、OHV1.6Lの2T-B型、105PS(レギュラー・ガソリン仕様:100PS)エンジンを搭載したもので、ボディ内外の仕様はレビン/トレノを引継いだ。
面白いもので、近年クルマ好きの間では、程度のいいレビンJ/トレノJを見付けて、2T-Gエンジンに換装する妙案がある、という。いうまでもなく、レビンJ/トレノJの方が乱暴に扱われることなく残っている例が多いからだ、と。なるほど、というものかもしれない。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
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