■冷房の仕組み、温度調整の仕組みを知ることも大事
冷房は、コンプレッサーが冷媒のクーラーガスを圧縮・冷却して、液化されたクーラーガスを熱交換器のエバポレーター内に噴射して気化熱で冷気を作るのだが、コンプレッサーがエンジンの駆動力を使って圧縮しているから、その分燃費が悪くなる。
それでもコンプレッサーは冷房中、常に働いているわけではない。コンプレッサーを駆動するプーリーには電磁クラッチが組み込まれていて、一定の圧力になればクラッチが切れて、駆動損失を減らしてくれる。
さらに液化した冷媒を噴射するエキスパンションバルブもエバポレーターの温度により噴射量を調整してくれるので、無駄にコンプレッサーが稼働してクーラーガスを圧縮し続けるようなことはないようになっている。
だから自分でACのスイッチをオンオフすることは燃費向上にはあまり効果がない。オンにした途端に規定の圧力までコンプレッサーが回り続けるだけで、同じ室温にするならむしろオフにしてしまった分、冷房を長く使うようになってしまう。
そしてクルマ用のオートエアコンは、温度設定だけを忠実に守って冷暖房してくれるわけではない。室内の気温と外の気温、さらには日照の程度により、体感温度は変わってくる。これらの条件を加味して、乗員が設定した温度から調整する空調を実現しているのだ。
さらに自分にとって快適な温度も、人によって違う。左右のダクトで温度設定を独立させているクルマが増えているのは、暑がりや寒がりが同乗した場合など、好みの室温が違っていても車内を快適に過ごせるようにダクトから吹き出す空気の温度を調整して、乗員に直接冷風や温風を届けられるようにしているのだ。
その上で、冷房を効果的に使い、できる限り燃費を落としたくない場合はどうすればいいか。オートエアコンの快適さを享受したいなら、25℃前後の室温設定で風量は自動、これに限る。
風量を調整してくれることでエバポレーターが利用する冷媒の量も調整されるから、コンプレッサーによる駆動損失もそれなりに抑えられることにはなる。
しかし、クルマの冷房の温度調整はエキスパンションバルブで行なっているのではなく(これは冷え過ぎによりエバポレーターが凍り付いてしまうのを防ぐのが目的)、室温調整のために冷風の温度を調整するのは暖房であるヒーターを併用している。
25℃より28℃の方が冷房が弱いので燃費が良くなりそうなイメージはあるが、設定温度に近付くと送り出す風の温度を調整するようになるので、よほど陽射しが強い状態でなければ暖房も少しだけ使っているのだ。
住宅用のエアコンのように設定温度に到達したら停止するようなら節電効果は高いが、クルマの場合は送風を止めてしまうとすぐに温度が上下してしまうので、適温に調整しながら風を出し続けることで快適さを実現しているのである。
なので、冷風を温めて調整せずに利用した方が、冷房によるロスは減らせることになる。つまり冷房を使う際には温度設定は最低にして、室温の調整は風量を調整することにより行なう方が、燃費は向上することになるのだ。
しかしこれを実践するには、信号待ちなどで体感温度によって風量を調整する必要がある。最低温度で最大風量のまま走っていれば、燃費はむしろ悪化する可能性もあるのだ。これを煩わしいと思うのであれば、オートエアコンに任せた方がいいだろう。
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