■クラウンのオーダーは延期! 発表2日前に知らされる現場
現在の新型クラウンに対する、販売店の対応を伝えていこう。
見積もりを作り、注文書を作成することは可能だ。販売条件は車両本体およびメーカーオプションは「値引きゼロ」で、ディーラーオプションは、販売店ごとに取り扱いが変わる。
クラウンではメーカーから値引きゼロが通達され、注文書へDOP以外の値引きを入れることができなくなった。(この方法はレクサスのやり方に近い)
注文書は作れるが、現在はメーカーへオーダーが出来ない。実質的な予約注文状態となっている。メーカーへオーダーが開始される予定は未定であり、車両生産は2022年秋頃から順次行われていくようだ。(一部グレード、ボディカラーは2023年1月以降の生産開始となる)
トヨタでは、新車の発表=注文・オーダー開始となるのが通例であり、クラウンに関しても、同様の流れを営業スタッフは疑わなかった。
そこへ発表の2日前(7月13日)に、オーダー時期未定と生産延期が突如告げられた形だ。既に担当顧客との折衝をスタートしていた営業マンも大勢いた状況で、急遽方向転換を強いられた。謝罪行脚となった営業マンも多いはずだ。
受注延期の背景には、元町工場の稼働が関係していると言われているが、販売店へ正式な説明は無い。bZ4Xのハブに関するリコールが問題の根源であるという見方もあるのだが、こうした情報もメーカーからは何一つ出てこないままだ。
注文は受け付けているが、オーダーはいつできるのか、全く分からない状況。さらに注文したクルマも、いつ納車されるのか全く読めない。
また、この状態は注文の電子管理も阻害する。
正式オーダーは、注文書の取り交わしが行われた順に行うようで、その順番は本部でアナログ管理しているようだ。販売各店では注文書が出来上がるたびに、本部へFAXを行い、本部は送られてきたFAXを紙ベースで順番に並べ、いつ来るかわからないオーダー時期を待つ。
注文から発注まで、ミスなくスムーズに行えるよう電子化が進められ、効率的に営業業務を行ってきたわけだが、この状況は時代が30年前に逆戻りしている。クラウンが変わるために若手を登用し、クルマは大きく刷新された。
しかし、イノベーションを起こしたクラウンに対する販売は、お世辞にも進化しているとは言い難い状況だ。
■クルマは商品力だけで売れるものではない
ワールドプレミア後、ディーラーにはクラウンののぼりが立ち、店内にもポスターや垂れ幕などが飾られている。しかし、肝心のクルマが無いし、先述の通りオーダーが出来ない状況だ。
それでもメーカー、そして販売店本部からは「売れ」という指示が来る。注文を取るにも準備や情報が必要であり、安心できる環境が必要なことを、製造側も管理側も分かっていないのではないだろうか。
クルマは商品力だけで売れるものではない。販売店・営業マンがあって売れていくということを、歴史の中でトヨタは強く認識しているはずだ。しかし、今回の対応からは、歴史から学んだことを生かされていないように感じる。
華々しい発表会の裏側で、トヨタディーラーの現場スタッフとメーカーとの間には、見えない亀裂が生じ始めてはいないか。
クラウンという既成概念にとらわれないクルマ作りは盛大に評価するが、販売のトヨタを支える全国の販売店を大混乱に陥れたままでは、クラウンがいかにいいクルマでも、販売は伸びないだろう。
販売店の立場を無視した、隠しすぎの情報や突然の発表、何よりクルマが来ない状況は、いち早く改善してもらいたい。このままではクラウン旋風ではなく大嵐へと空模様は変わってしまう。
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