名車トミーカイラZZを復活させたEVベンチャー GLMの実力

■ガルウイングドアの4ドアスーパーカー「G4」

新型zzは「組立車制度」という仕組みを用いたため、法的に99台しか生産が認められなかったが、この99台がユーザーの手元に届くには、実に3年もの時間がかかった。それは京都各地の部品サプライヤーの信頼獲得に時間を要したためだという。

コツコツと説得を続け、彼らも納得する製品作りに成功した小間氏は、ZZのレベルをはるかに超える、次なるプロジェクトを立ち上げた。それが4座スーパーカーG4の開発だ。

これまでスーパーカーといえば、2シーター+ミドシップエンジンというレイアウトがお決まりだったが、G4はEVの設計自由度の高さを利用して、流麗なクーペボディでありながら、4人が座れる空間を実現した。しかも乗り降りするドアは、4枚のガルウイング(正式名はアビームセイルドア)である。

2016年10月に開かれたパリモーターショー。GLM・G4はこの晴れ舞台で姿を現わした。詳細なスペックは明かされなかったが前後車軸に合計540psを発生する高出力モーターを組み合わせ、航続距離400km、0-100km加速=3.7秒。最高時速は250kmを目指すと報じられた。

4枚のガルウイングドアを持つ4座スーパーカーG4。’19年市販を目標としていたが、現在開発は凍結されている。カッコよかっただけに、なんとももったいない

■トップ企業と提携 EV開発の夢は健在

その後G4は日本でも発表の場が設けられ、「2019年の発売を目指す」、「価格は4000万円」というアナウンスがなされた。

ところが、この発表直後から、GLMは急速な体制刷新を余儀なくされることになる。その理由は、予想をはるかに超えて進んだ自動運転技術だ。

もともとZZを開発した時点で、小間社長は「単にバッテリーとモーターを繋げば動くというものではない。クルマとして完成させるには、もっと高いレベルでの開発が必要で、それには膨大なコストがかかる」といったコメントを残していた。ところがそれに加えて、通信やAIを使った自動運転の機運が急速に高まり、より多くの開発資金が必要な状況が生まれたのだ。

結果、2017年7月、GLMは香港の投資会社オーラックスホールディングスの傘下に入り、EVのプラットフォーム開発を請け負う会社へと舵を切ることになった。バッテリーやモーター、サスペンション、操舵システムといったクルマの車台部分を手がけ、技術のない新興メーカーなどに販売していくビジネスだ。

ZZのプラットフォーム部分。今後GLMはこうしたプラットフォーム開発に資金を集中させる

とはいえGLMの完成車開発の夢は消えていない。オーラックス傘下となった以降も、ボッシュや東洋ゴム、京セラといったトップ企業と提携などを進め、自社技術の厚みを増すことに努力している。

いつの日か、4枚のガルウイングドアを開いた市販型G4の雄姿を見たいものだ。

〈GLMの基本データ〉
創業年:2010年4月
所在地:日本・京都
創業者:小間裕康
社名の由来:
GLMは「グリーンロードモータース」の略。ただしロードはLordであり「領主」の意味。持続可能なモビリティを目指す「緑の主の自動車会社」というところか

〈10秒でわかるGLM〉
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京都大学の地元企業創生プロジェクトから生まれたEVベンチャー
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京都の自動車ブランド、トミーカイラZZをEVとして復活させ市販
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香港企業と提携し、EVプラットフォーム開発企業として飛躍を目指す

GLM公式サイト

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