ここ数年、頻繁に言われるようになった「異常気象」。その中でも特に注意したいのが「線状降水帯」による局地的な大雨による被害だ。今年は7月15日に全国で初めて発生し、1時間での雨量が宮城県で100mmを超えるといった「記録的短時間大雨情報」が発表された。
では、実際このような状況に出会ってしまった際、ドライバーはどうすべきなのかを考えてみた。
文/高山正寛、 写真/AdobeStock(Paylessimages@AdobeStock)
■そもそも「線状降水帯」って何だ?
今回、筆者はこの原稿を書くにあたって知人の気象予報士に取材を行った。実は筆者もこっそりと気象予報士の勉強をしたことがあったが、知人は合格、筆者は(もちろん)不合格だった。ま、そんなことはどうでもいいのだが、この「線状降水帯」というのは非常にやっかいなものらしい。
線状降水帯は予報用語で「線上に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水を伴う雨域」と定義される。大気の不安定な状況で発生した積乱雲などが線上に並ぶことで広域に雨を降らせるわけだが、驚くべきはその長さ。
最大とはいえ、300kmという距離は東京から豊橋あたりまで。その間、ずっと雨が降り続けるわけだから当然降水量は一気に増えることになる。
これに対し、2022年6月1日から気象庁は線状降水帯の「予測情報」の提供を始めているが、前出の気象予報士によれば「線状降水帯の予測は非常に難しく、確率的には予測した地域で発生を的中できるのは25%程度」。現在の気象予測の技術では難易度が極めて高いとのことだ。
■慢心が招く重大な事故
この原稿を書いている8月3日は山形県や青森県で線状降水帯が発生し、道路が冠水している映像が流れている。で、ここで問題なのが、その映像上にクルマが水しぶき(というレベルは超えているが)を上げながら走っていることだ。
最近人気のSUVならば最低地上高があるから少しくらいは大丈夫じゃないか? そんな声も聞こえてきそうだが、とんでもない話である。確かにクルマには一定の気密性はある。しかし、それはあくまでも短時間におけるレベルであり、道路上が水浸しになる「冠水」状態ではそうはいかない。
クルマの構造にもよるが、エアダクトから万が一水が入ってしまうと最悪の場合、一発でエンジンは壊れてしまう。そしてブレーキは当然利きにくくなるし、ワイパーをマックスの速度で動かしても拭き取りが間に合わない。
そして何よりも電装系への影響も考えられるわけだから、これをやられたらワイパーもヘッドライトも動作しなくなる(その時にはすでにクルマは動かなくなっているとは思うが)。
また、もし冠水してしまった場合、脱出することも難しいケースもある。水圧でドアが開かなくなってしまうからだ。
冠水によるダメージは保険でカバーできる部分もわずかにはあるが、単にクルマが壊れるだけでなく、その後の売却にも大きく影響する。
実際に冠水してしまった場合、買取額は大幅にダウン。車内のダッシュパネルあたりまで水没した場合は「日本自動車査定協会」の冠水車の減点規準では買い取りの減点率は50%と悲惨な結果になってしまうのだ。
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