■新型信号機に隠されたデザイン
ドライバーの身近なところでもデザインの変化がある。信号機だ。去年から大阪府をはじめ全国各地で設置が始まっている。大きく分けてふたつのタイプが見られるが、左の写真の四角い印象のものが「信号電材」の新型信号機である。
「ひさしがなく、レンズまわりのビスもなくすっきりとした印象になったと思います」と語るのは、この新型信号機をデザインしたプロダクトデザイナーの秋田道夫氏。
従来型に比べ、確かにシンプル。が、その見た印象以上に“意味のあるデザイン”といえそうだ。その部分を秋田氏にうかがってみた。
まず、信号機の変遷。1994年以降電球式に代わるLED式の設置が進んでいるが、信号機のサイズそのものが大きく変わるのは49年ぶりとのこと。例えば、横幅が125cmから105cmへと小さくなっているが……。
「サイズでいえば、従来型の厚さが63cmなのに対し、新型は9cmと劇的に薄くなっています。レンズ直径が30cmから25cmになったのも大きな変化で、通常運転しているぶんには気づかないと思いますよ。
実際に視認テストを実施して、5cm小さくなってもLEDの素子の密度を高めていることで強い存在感のある光に。なので視認性は問題ありません」という新型信号機は“ローコスト信号機”といえるほど、省力化が図られたデザインになっている。
改めて特徴を挙げると……。
①厚さ9cmという薄型で、従来型より6割軽い重さ9.9kg。
②薄く軽いので積雪しにくくなり、台風など強い風の影響も受けにくい。
③レンズ面の正面はやや丸みがあり、ハリが出ている。これも積雪防止の役割がある。
④さらに雪国向けは中にヒーターが内蔵してある。
⑤電球式と比べて消費電力が1/6。
⑥交差点で横の信号を見て飛び出す“フライング走行”防止のために、斜めからは見えない遮眼式のタイプもある。
⑦小さく薄いので一度に大量に運べ、省力化につながる……など、多彩にある。
まさに意味のある、意図を感じるデザインと機能。
「子どもがLEGOで街並みを作った時、可愛い信号機にしてもらいたい。そんなデザインにしてみたんです」と秋田氏はニコリと語る。
クルマ社会と交通安全を支えるデザイン。あなたの町でももうすぐ会えるはずだ。
〈PROFILE〉秋田道夫……プロダクトデザイナー。ケンウッド、ソニーを経てフリーとして活動中。家電のほか、薄型LED歩行者用信号機やJR西日本のIDカードチャージ機などをデザイン
■普段運転して接するアレにも意味があるのです
■ガードレールに隠されたデザインと工夫の数々
よく見かける一般的なガードレール。凹凸のある表面をしているが、このデザインや形状にも意味がある。国土交通省から聞いた話をご紹介。
凹凸のある表面をしているのは、ビーム(ガードレールの表面)の剛性を高めて衝突エネルギーの吸収性能を高めるため。平らな表面では曲げに対する抵抗力が弱く、それを波形にすることで抵抗力を高めているという。
例えばクルマがガードレールに衝突した場合、ビームが押され、波形がつぶれて平らになるまでビームの剛性により抵抗力が生じる。つまり、衝突軽減になるわけだ。
また、支柱とビームをつなぐ「ブラケット」にも役割があり、クルマが支柱に直接衝突しないための、緩衝材的な役割となっている。
■高さ、色にも意味がある
ガードレールの高さは原則として0.6m以上1m以下。クルマがガードレールに衝突した場合、乗員の頭部などがその部材に直接衝突することを防止するため。またガードレール越しの視認性の確保も、その高さにした理由だ。
ガードレールが白なのは夜間も含めた視線誘導の効果などを考えて。
その後2004年(平成16年)、「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」策定を機に、視線誘導の機能は反射板などの付属物にもたせて、ガードレール本体は道路周辺の基調色などに合わせ、こげ茶色やグレーベージュなども選べるようになった。
■知ってました?現在の横断歩道は3代目
下の①の横断歩道、ちょっとビックリ。1960年、法令で初めて横断歩道が定められた時のもの。1964年までこのデザインだったが、なんだか目がチカチカする……。1965年に改正されたのが②(「はしご型」)で、設置作業の効率化を図るのも狙いだった。
そして1992年、現在の③(「ゼブラ型」)へ。なぜ③に変えたか? 次の4つの理由があるという。
❶ケバケバしさがなくなり、都市美観上効果がある
❷水はけがよくなり、標示面でのスリップを防止できる
❸通過車両によって側面が消える弊害がなくなり、補修も容易
❹設置にかかる時間が短縮される。
……シンプルが一番、ということか。
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