トップの写真はカムリ。本文で紹介しているカローラスポーツ同様、“つり目”のしゅっとした顔つきをしている。こうしたフロントマスクのデザインは「キーンルック」と呼ばれ、2013年ごろから、2代目オーリスと初代後期のSAIといった車種を皮切りに導入され始めた。
そしてこのデザインには見た目以外にも、れっきとした「意味」があるという(その意味やキーンルックの詳しい説明については本文に譲ろう)。
デザインは人の感性に訴えるものだ。クルマ選びでも重要な位置を占めるという人は多いだろう。デザインが気に入れば走りは“そこそこ”でいい、という人すらいるかもしれない。
では、作る方はどうだろうか、感性オンリーで作っているか、といえば、そんなことはない。むしろ、とんでもない量の科学的なデータやリサーチの結果、メーカーの方針といった意思や意図の間で板挟みになりながら、その中で、まだ誰も見たことのないものを目指している。
デザインとは意志の塊なのだ。
ここでは、クルマ界にまつわる様々なデザインを取り上げ、そこに込められた意図を紐解いてみたい。
もちろん「この意味は後付けっぽいなぁ…」というものもなくはないが、それでも事情や理由があるのは大事なこと。事情があってもカッコ悪くちゃ意味がない、というご意見もあるだろうが、まずはその事情を知っておくのも損はないはず。どんな理由や事情、言い分があるのか、お聞かせ願いたい。
※本稿は2018年8月のものです
文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年9月10日号
■見た目重視だけではない。クルマの部分デザイン
まずはクルマの部分やパーツについて、“そのデザインには意味がある”を探ってみた。トヨタに聞いたところ、次のことを教えてくれた。
■「キーンルック」は怖い顔を狙っているわけではない
ヴィッツ、カムリ、最近ではカローラスポーツなどでキーンルックという顔が多い。キーンルックは「鋭敏で賢い、精悍な顔つき」という意味で、肝は“トヨタエンブレムの立体的な強調と、ダイナミックなアンダー・プライオリティとの組み合わせ”とのこと。
ダイナミックなアンダー・プライオリティってなんぞや? と思うが、空力性能、冷却、歩行者保護向上などに配慮したアンダーグリルの主張を強調したデザイン。キーンルックが歩行者保護向上に結びついているとは想像しなかった。
「目が吊り上がった怖い顔が狙いではありません」(トヨタ)とのことである。
■空力操安性の向上にも貢献するドアハンドル
クラウンのドアハンドルは、重厚さや握りやすさなどを考え、厚みや形状を試行錯誤し作り込んだという。
ドア開閉の扱いやすさや質感だけでなく、全体の形状が“空力操安性の向上”につながっている、というから驚く。また従来、ドアハンドルの側面にあった稼動部と固定部の見切りを廃止し、風切り音を低減させているのもポイント。
ちなみに、リアコンビのサイドにある“突起物”も空力操安性向上に貢献している。
■低重心に見える視覚効果だけではないロッカーカバー
上の写真でも紹介しているが、クラウンRSには低重心に見える視覚効果があるロッカーカバーを採用。ローダウンしたように見えてスポーティさが漂うが、フィンのように外側へ張り出した断面形状は操安性の向上につながるという。
見た目だけでない意味のあるデザインの代表格だ。
■「こだわりと遊び心」も!
86のグリルにはメッシュが採用されているが、若干変わった形状をしており「Tメッシュパターン」というそうだ。トヨタの「T」をモチーフにしているそうで、なるほど「T」に見える。
ちなみに、リアフォグランプも同じ形状をしており、トヨタの独自性を訴求したこだわりと遊び心のあるデザイン。
コメント
コメントの使い方