2021年6月に300系へとフルモデルチェンジをした、トヨタ「ランドクルーザー」。その弟分である「ランドクルーザープラド」(以下プラド)のフルモデルチェンジも近づいている。
2009年9月に登場し、2017年9月には、フロントフェイスを大幅に変更した後期型へとマイナーチェンジをうけている、現行150系プラド。フルモデルチェンジを控えているいま、現行型プラドの長所と短所を振り返りつつ、新型に期待したいことについて、考えてみよう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
プラドの強みは「走破性」「使い勝手」、そして「リセール」
モデル末期に近いプラドだが、国内販売は尻つぼみするどころか、むしろ増えている。「ランドクルーザー」としての過去5年の販売台数は、2017年2万2576台、2018年2万9416台、2019年2万8475台、2020年2万6296台、2021年は3万3481台、2022年も7月までに2万台(月販平均は約2900台)を超えている(いずれも自販連による販売台数)。プラドはこのうち8割程度を占めるので、マツダCX-5(2021年、2万2903台)や、スバルフォレスター(2021年、2万2431台)よりも多く売れている状況だ。
なぜこれほど人気があるのか。もちろん、本格クロカンとして、ランクル譲りの走破性の高さは大きな魅力であるが、実際にプラドを選択する方は、「使い勝手のよさ」が大きいという。
プラドは、全長4825×全幅1885×全高1850mm(300系ランクルは4950×1980×1870)、全高はランクルとほぼ変わらないが、全長は125mm、全幅は95mmもプラドの方が小さい。ランクルほど、全長全幅があると、優越感は非常に高いのだが、狭い道や駐車時などは、クルマの取り回しの面ではかなり辛い。その点プラドは、全長と全幅はアルファードとさほど変わらないサイズ感であり、狭い駐車場でも、取り回しは何とかなる。
また、プラドは、5人乗り仕様に加えて、床下格納式の3列シートを備える7人乗りもある。3列目を畳めば、巨大なラゲッジスペースも確保できる。走破性が高く、荷物も載せられるとなれば、アウトドアレジャーなどにいくクルマとしては最適だ。
また、プラドもランクル同様に、リセールが抜群にいい。業者向けのオートオークションでは、4年落ちあたりの150系プラドが、新車での購入価格と変わらぬ価格で取引されている。その理由はやはり、海外輸出の需要が高いこと。日本で走行していた質の良い中古車が高値で取引されており、年式やグレード、ボディカラー、走行距離、装備内容次第では、売却価格が新車価格を上回ることもザラだ。
プラドの人気グレード、「TX Lパッケージ(7人乗り)」は税込432万円。ランクル(最人気グレード「ZX」は730万円)よりも入手しやすいうえに、新車で購入して数年間乗って遊びまわっても、ほぼ買値で買い取ってもらえる。プラドは、大変お得なクルマなのだ。
「盗難率の高さ」と、「デザインや先進運転支援の古さ」が、現行プラドの弱点
ただ、リセールがいいクルマというのは、盗難率が高いクルマでもある。2021年のランクル(プラド含む)の盗難件数は331台、年間盗難車全体の約14%にあたるそう。ランクルやプラドでは、GPSが通じないヤードで車両を半壊してパーツとして輸出する闇ルートが確立しているという。300系ランクルでは、指紋認証システムが搭載されたが、プラドも次期型では同様に搭載されるだろう。
また、インテリアデザインや先進運転支援系は、他のトヨタ車と比べて大きく時代遅れだ。ナビゲーションのサイズやインパネのレイアウトなど、10年前の水準であり、古さが目立つ。先進運転支援も、追従型クルーズコントロールはあるが、ステアリングアシスト系が乏しく、昨今登場した、トヨタの新型ミニバンや新型SUVとは、比べるまでもない。
この辺りは、マイチェン規模では修正ができない部分であり、2022年8月に登場した、ランドクルーザープラドの特別仕様車 「TX Lパッケージ Matt Black Edition」でも、改良はなされていないが、次期型では更新されるはずなので、心配はない。300系ランクルの出来の良さを見ると、次期型プラドの進化は、大いに期待ができる。
コメント
コメントの使い方