日本車のホイール固定方法は、ナット固定式が主流ですが、欧州車(英国車など一部は除く)はボルト固定式が主流です。基本的なクルマの構造は同じなのに、なぜ欧州車はナット止めでなく、ボルト止めなのでしょうか。
ホイールのボルト固定式とナット固定式、それぞれのメリットとデメリットを整理して、欧州車がボルト固定式を採用している理由についてご紹介します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_Alex、Adobe Stock_EdNurg
写真:LEXUS、写真AC、Adobe Stock
高速走行の頻度が高い欧州車は、ボルト固定式で剛性を強化
欧州車が採用しているボルト固定式では、ホイールハブ側に雌ネジが切られており、そこにボルトを固定して締め付けます。この場合のネジの接続面は、ホイールハブのねじ山とボルトのねじ山の1点となります。一方、日本車が採用しているナット固定式の接続面は、ホイールハブにハブボルトを固定している部分と、そのハブボルトにナットを固定して締め付ける部分の2点接続になります。
欧州車は、ドイツのアウトバーン走行に代表されるように、日常的に150km/hを超えるような高速走行で使われるため、加速力とともに、高速走行からでも適切に減速・停止できる強力な制動(ブレーキ)力が要求され、過大な負荷がかかる足回り部品については、高い剛性が求められます。
ホイールの組付け剛性は、剛性低下の要因になりやすい接続点(ねじ部)が少ないボルト固定式の方が、高い剛性が得られます。これが、欧州車がホイールをボルト固定式にしている決定的な理由です。
ボルト固定式のデメリットは作業性が悪いこと
機能的には優れているボルト固定式ですが、最大のデメリットは作業性の悪さです。
タイヤ交換時、ボルト固定式の場合はホイールハブのボルト穴とホイールの取付けボルト穴の位置を合わせてから、ボルトを通して取り付けます。そのため、重いタイヤを持ち上げて穴の位置を合わせて、ボルトを通して締め付けるという作業になります。とても一人では難しく、ホイール仮固定シャフトなどの専用工具が必要な作業になります。
また取り付け時に、ハブ側の雌ねじを潰してしまうと、ハブごと交換することになり、交換費用がかかってしまうというデメリットもあります。
日本車は、ナット固定式で作業性を優先
日本車は、欧州車に比べると高速走行の頻度は低く、車速は最高でも120km/h程度に抑えられます。したがって、ホイールの固定に欧州車ほど高い剛性は求められず、ホイール脱着作業の利便性を優先してナット固定式が採用されています。
ナット固定式では、ホイールハブからハブボルトが出ているので、ホイールの取付けボルトにハブボルトを通し、ナットで締めるだけで済みます。また取り付け時にボルトを壊しても、ホイールハブとは別の部品なので、ハブボルトだけを交換すればよく、費用が安く済むというメリットもあります。
前述のように、ナット固定式は、ボルト固定式に比べて剛性が低いですが、これはあくまでボルト固定式と比較してのことであり、日本の走行条件では問題ありません。唯一のデメリットとして考えられるのは、ナット固定式は部品の点数が増えて、ホイール重量が増えることです。重量増しは僅かですが、バネ下質量が増えるとクルマの応答性に影響を与え、重いホイールを履いたような悪影響が出る可能性があります。
コメント
コメントの使い方素人考えだがたしかにボルトだと整備性は悪そうだ
特にジャッキじゃなくリフト等で高く上げてしまうと苦労しそう
まあ寸切りなどを2~3本突っ込んどいてホイールをぶら下げてから
きめていくとか工夫すればどうとでもなりそうな気もするけど
ボルボV70乗ってますが、降雪地なので年に2回タイヤ交換。ボルト式は体力を消耗します。あと数年後にはこの為に車手放す事になるでしょう。
剛性が必要であればトラックも採用するはずですが…ナットでも剛性が確保できるのでは?
色々な意見が出ているので、改めて説明しますと、
「ナット固定よりボルト固定の方が強度がある」は間違いです。
これは世界中の工業規格でも謳っています。(JIS、ASME、DIN等)
なお、同じ材質・呼び径での比較です。
但し「ホイールの固定」は「ナットがベスト」といった意味でもありません。
車の設計では、必要な強度を満たした上で、重量・生産性・メンテナンス性・デザインなどを考慮して決まるからです。
アメ車はナット締めですね。
欧州車がボルト留めなので「日本特有のガラパゴス規格かー」と思ってたら、そんなことは無いという。
ただ今の日本車メーカーは、ベンツ・BMWを車づくりのベンチマークにしてるフシがあるので、これからボルト化が始まっていくのかな…
一般車に1番近いWRCトップ車両はナットドメ スーパーGTでもナットドメです トヨタヤリスWRCカーはナットドメです間違い無くです。昔木炭自動車から整備して居た自動車整備士残念ながらもう没はボルトドメのほうがボルトを舐めやすいと もし舐めてもナットタイプのほうが修理はたやすいボルトドメは修理にかなり面倒で時間が掛かると言って居ました。なので私はナットドメ優勢判定します。
ボルボは逆にボルトからナットに変えてきている。
どちらかが絶対的に優れているというものでは無いと思う。
剛性が理由?ちゃんと調べていますか?
記事は沢山の読者さんが見て、その方達に影響を与えるわけですから、もっと勉強して責任を持って正しい情報を発信していただければと思います。
一般車両より更に過酷なモータースポーツ系は漏れなくナット式だったと思うが
欧州車における前提条件とどう違うのかな?
秒を競うモータースポーツは作業性という合理的判断だと思われます
ボルト固定式は触ったことが無いが、ハブ側のねじ山が穴の1センチ程奥から切られていれば、専用工具が無くとも位置合わせが容易にできると思う。(大型車両を除く)