■e-SKYACTIV Dで高効率と運転の楽しさを両立!
さて、CX-60について、誰もが気になっているのは、エンジンだろう。CX-60には、4つのパワートレインのバリエーションがある。
ラインナップされているのは、2.5L直4ガソリンエンジン(188ps/250Nm)、3.3L直6ディーゼルターボエンジン(231ps/500Nm)、3.3L直6ディーゼルターボエンジン(254ps/550Nm)+モーター(16.3ps/153Nm)のマイルドハイブリッドモデル、PHEV(パワートレインの詳細は不明)。
今回、試乗したのは、ディーゼルのマイルドハイブリッドモデルだ。
他メーカーは、環境性能を考慮してエンジンをダウンサイジングしているなか、「どうしてマツダは新しく直6エンジンを作ったの?」と思う人もいるかもしれない。
実は、マツダ車にクリーンディーゼルモデルが増えてきた際、エンジニアから「排気量を大きくした方が燃焼効率を向上でき、環境性能も上がる」と聞いた覚えがある。
つまり、この直6エンジンは、単にスポーティで高級なモデルを産むためだけに作られた訳ではなく、排気量を大きくすることによって、環境性能も向上させる狙いがあるのだ。
3.3Lディーゼルエンジンを搭載したマイルドハイブリッドモデルの最大トルクは550Nmだが、本来ならもっとトルクを大きくすることもできるそうだ。あえてそうしなかったのは、気持ちよくCX-60を運転できる分はきちんとパワーを与えて、その余剰分を燃焼効率アップのために注力したからだという。
また、燃焼室の空間を2つに分けた2段Egg燃焼室と多段噴射を組み合わせることで、噴霧された燃料と空気がきれいに混ざり合って、より効率の良い燃焼を実現した。さらに、重量は増すものの、ピストンを低熱膨張の少ない鉄にすることによって、機械抵抗を少なくし、エンジンがスムーズに回転するようになった。
これらによって、WLTCモードの燃費は、ディーゼルエンジン単体のモデルでは18.3〜19.8km/L、今回の試乗車のマイルドハイブリッドでは21.0〜21.1km/Lと、ミドルサイズのSUVでもトップクラスの燃費性能となっている。燃料代が高騰している今、軽油というところも嬉しいポイントだ。
クルマの電動化が進むなか「エンジンは、まだ効率を上げられるから可能性がある」と言っていたマツダが、本当に高効率と運転の楽しさを両立させたエンジンを作り上げたことには、感嘆せざるを得ない。
■音も楽しめるディーゼルエンジンの魅力
机上の性能は確かだろうと思いつつ、「じゃあ、実際に走ってみるとどうなのだろう」と運転してみると、走り出しからエンジンの気持ちよさをしっかり体感することができた。
一般道では、低回転からでも滑らかにパワーが溢れてきて、ゆとりのある上質な運転ができるし、高速道路の合流などでパワーが欲しい時にアクセルペダルを踏み込むと、瞬間的に大トルクを放出してくれるので、どんなシーンでも気持ちよく走れると感じた。
直6エンジンは、一般的にバランスの良いエンジンとして知られているが、スルスルとスムーズに回っていることがドライバーにも自然と伝わってくる。
そして、個人的に良いなと思ったのは、ディーゼルエンジンの音だ。低速のときにはクルクルと猫が喉を鳴らすような音が聞こえてきて、ペダルを踏み足していくとその操作に寄り沿うように音の迫力も増していく。
それがうるさく感じず、むしろ心地よく感じるのは、人間の感覚にぴったり合っているからなのだろう。近年は、とにかくキャビンの中を静かにしようと、エンジン音が感じられないモデルが多いが、あえて「聞かせる」ことが満足感につながる体験は新鮮だった。
低速ではモーターのアシストが介入しているはずだが、ドライバーがそれを意識する瞬間はほとんどない。直6のフィーリングに余計な雑味が入らないから、エンジンを純粋に楽しむことができる。
少し気になったのは、発進などでギクシャクする時があること。CX-60には、新開発のトルコンレス8速ATが搭載されていて、MTのようなダイレクト感を売りにしている。確かに小気味よくシフトアップするし、変速のタイミングも自分でMTを操作する時の感覚によく似ている。
ただ、アクセルペダルを成り行きで操作していると、低速でのトランスミッションの変速タイミングを見誤って、軽いシフトショックが出ることがあるので、ドライバーにはある程度の運転の心得が必要になりそうだ。
ステアリングは、コーナリング中でも直進中でも据わりが良く、重厚なクルマの雰囲気にマッチしている。しかし、ハンドルの操作感が重いため、私のような女性ドライバーは長時間運転する際に少し苦労するかもしれない。
CX-60の車両重量は、1910〜1940kgと重いため、ハンドルを切るたびに、ボディがのっしのっしと動いているのが伝わってくる。それでも、スムーズにコーナーをクリアできるのは、サスペンションまわりの設計とロードスターにも採用されているKPCによるものが大きいのだろう。
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