■意外に「じゃじゃ馬」な理由はサスペンションにあり?
ここまでは好印象なCX-60だったが、路面が少し荒れた場所に踏み入れた際、思ったよりもクルマが突き上げることに驚いた。デコボコした路面を走るたびに、後席に乗っている担当編集者がバックミラー越しに上下に跳ねている様子がありありと見受けられる。
この要因のひとつとしては、リアのサスペンションにピロボールを採用したことにあるようだ。最初は「SUVをピロボールにするの!?」と驚いたが、マツダが理想とする車両の運動性能を得るために必要な決断だったという(このあたりがマツダらしい)。
また、人が前後に傾くピッチ方向の動きは不快に感じやすいため、ピッチセンターを後方化することで、ピッチングを上下のバウンス運動に変換したそうだ。それらの要素が重なって、より跳ねを感じる動きにつながったのかもしれない。
CX-60は、その上質で重厚な雰囲気から、CX-8のようなしっとりとした乗り味を想像していたので、この乗り心地には少々面食らってしまった。ただ、乗り心地の悪さが気になったのは、総走行距離が約2500kmの個体。
総走行距離が約4000kmのCX-60に乗り換えると、この跳ねるような動きは収まり、よりイメージに近い乗り心地になっていた。エンジニアによると、「走行距離によってピロボールの馴染み具合が変化し、それが乗り心地に影響するのはありえる」とのことだった。
納車直後は、この硬さに驚く人もいるかもしれないが、走行距離を重ねることで、ある程度は改善されるようなので、長い目で足回りを育ててみることをおすすめする。
■期待通りの「業物」だが一抹の不安も……
CX-60は、マツダの美と走りの追求を体現した、まるで業物のようなモデルだ。その道に長けた人が見れば、見た目の美しさだけではなく、素晴らしいパワートレインや随所に光る技術によって、唯一無二のSUVと評価するはずだ。
しかし、何も知らない一般の人たちはどうなのだろう。
確かに、その価格帯に合った美しさや上質感のある設えは納得の出来だと思うが、少し触れてみると、距離を重ねないと小慣れない乗り心地やスペックを熟知していないとなかなか魅力を感じづらいパワートレインなど、その切れ味の鋭さに一歩引いてしまう気さえする。
これまでのマツダ車は、誰もが買えるモデルでも、そのドライビング体験は、他社を退けるほど満足感の得られるものだった。CX-60は逆に、その高級さと定められたレイアウトが先行して、少し自分の首を締めてしまっているような節がある。
これから、CX-60に続いてラージ商品群が増えるにつれて熟成が進み、マツダ車らしく誰の肌にもしっくりと馴染むモデルになりますようにと、いちマツダファンとして祈るばかりだ。
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