欧州車のホイールが黒く汚れている理由 低ダストでしっかり効くブレーキパッドはないのか?

■ドライバーの平均レベルが高く、厳格に性能を求める欧州

1000km走行後のアルミホイール。左は純正ブレーキパッド、右はディクセル製ストリートダスト低減パッドMタイプ
1000km走行後のアルミホイール。左は純正ブレーキパッド、右はディクセル製ストリートダスト低減パッドMタイプ

 しかし環境問題について敏感な欧州なのに、ブレーキダストに関しては無頓着というか、対象外と言わんとばかりにホイール真っ黒、なのである。高級車だろうがブレーキバイワイヤとなろうが、そうした傾向は変わらないようだ。

 高速走行中に前方でアクシデントが発生した場合、強くブレーキングしながら車線変更して緊急回避を行うには、しっかりとした車体と足回り、そしてブレーキやタイヤが必要だからだ。

 ABSやESCというブレーキを活用した電子デバイスが登場しても、そうしたモノに頼るのではなく、あくまでドライバーが自ら操作してクルマをコントロールさせるのが基本なのである。

 実際、欧州や米国の高速道路を走っていても(たまにおかしな人はいるが)、日本よりも運転のレベルが高いことを実感させられる。

 国産車のブレーキパッドは、かつてアスベストが使用されてきたが、現在はノンスチール・ノンアスベスト・オーガニック(NAO材と呼ばれる)が主流。

 グラスファイバーやアラミド、銅、セラミックが主成分となっており、長所はローターへの攻撃性が少なく、鳴きや低ダスト。短所は耐熱性がよくないため、一般走行用となっている。

 すべての欧州車が同じ摩擦材の配合ではないだろうが、欧州車のブレーキダストが多いのは摩擦調整材として使われる黒鉛の配合が多いためと思われる。黒鉛は鉛筆の芯と同じモノで柔らかく滑らかな感触を与えながら熱に強いという特性を持っている。

 具体的にはメルセデス・ベンツやBMWなど欧州車に純正採用されているブレーキパッドの材質はロースチール(メタル系)のパッドで、NAO材にスチール成分が10~30%配合されており、高速域での使用を考慮した設計となっているため、耐熱性が高く、効きがいい分、ダストが多い。

 GRヤリスもサーキット走行を想定し、耐熱性や効きを重視したこのメタル系ブレーキパッドを採用している。

 日本のユーザーはブレーキ鳴きにも敏感で、少しでもブレーキが鳴いたらクレームを付けるユーザーがいる。そのため輸入車ディーラー老舗のヤナセでは、セラミック配合の摩擦材を使用し、低ダスト、低ノイズ、長寿命のHELLA PAGID Brake SystemsのSILVERAMIC(シルベラミック)を販売している。

ヤナセオートシステムズが販売している低ダストパッド シルベラミック
ヤナセオートシステムズが販売している低ダストパッド シルベラミック

 一般的な欧州車用低ダストパッドの場合、スチール含有率の低い摩擦材を使用するものの、スチールの含有率は25%以上。ヤナセが販売しているシルベラミックはNAO材とセラミック配合の摩擦材を使用し、スチールの含有率0%となっている。

 また、ドイツのATE製セラミックパッドは、最新のファイバーテクノロジーにより開発された新コンパウンドを採用。ブレーキダストの発生を制動力はそのままに極限まで抑えられており、材質上、ディスクローターへの攻撃性も弱いのでディスク粉も減少、ホイールの輝きを長期間保つことができるという。

 ちなみにブレーキダストでホイールが汚れないブレーキパッドにも、その実現方法は大きく分けて3種類ある。ダストを出さない摩擦材とする方法、ダストをホイールに付着させない摩擦材にする方法、ダストが白っぽく汚れが目立たない摩擦材とする方法だ。

 しかし輸入車用のブレーキパッドとして、かつてアフター品のストリート用をいくつか試したことがあるが、市街地でのフルブレーキングを2、3回繰り返しただけでフェード気味になるものも珍しくなかった。これは日本の道路事情では許容されても、欧州では受け入れられないだろう。

ブレーキダストに悩んでいる輸入車オーナーに最適なディクセルのストリート用ダスト低減パッドMパッド。日本車用はフロント1万3200円~、リア1万3200円~。輸入車用はフロント1万7600円、リア1万6500円
ブレーキダストに悩んでいる輸入車オーナーに最適なディクセルのストリート用ダスト低減パッドMパッド。日本車用はフロント1万3200円~、リア1万3200円~。輸入車用はフロント1万7600円、リア1万6500円

ディクセルストリート用ダスト低減パッドMタイプをわかりやすく漫画で解説

 日本のブレーキパッドメーカーも技術開発を進めており、例えばディクセルのストリート用ダスト超低減パッドMタイプ(材質はNAO材)は、ローターの攻撃性が驚くほど低く、ローターのロングライフ化に貢献しているほか、ストッピングパワーを犠牲にすることなくダストは大幅に低減。

 さらに高いコントロール性を持ちつつ、唐突に効くのではなく踏力に応じて効きが上がるビルトアップ型のため、同乗者も快適、という特性を持っている。

純正ブレーキパッドでは、ホイールに赤茶けた鉄粉が付着し、黒ずんでいるのが一目で分かる(1000km走行後)
純正ブレーキパッドでは、ホイールに赤茶けた鉄粉が付着し、黒ずんでいるのが一目で分かる(1000km走行後)
ディクセルMタイプを装着するだけで、ブレーキダストの付着を大幅に低減できる(1000km走行後)
ディクセルMタイプを装着するだけで、ブレーキダストの付着を大幅に低減できる(1000km走行後)

 欧州ではその部分にコストをかけるより他の部分を優先していて、あえてブレーキパッドやローターの素材は定評のあるモノを使い続けているのだろう。

 またブレーキダストの大半は簡単に落ちるものであるが、パッド内の鉄材やローターの摩耗による鉄粉は溶けて塗装に食い込むので落としにくい。パッドの摩擦材を変えるか、専用のクリーナーを使うことで解決できる。もちろん、ダストが付着しにくくなるコーティングを施すこともできる。

 ブレーキで何を優先すべきか、欧州と日本では道路環境や考え方が違う。日本で欧州車を所有するなら、そのことを理解して、そのうえでどういうブレーキパッドを使うか決めることだ。欧州車の持ち味を生かすか、日本での利便性を考えるかはオーナー自身で判断すべきだろう。

【画像ギャラリー】ホイールの黒いダスト汚れは制動力の証!? 欧州車のホイールがすぐに黒く汚れる理由(5枚)画像ギャラリー

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