いまだに、ブレーキダストでホイールが真っ黒になっている欧州車をよく見かける。しかし、日本車は軽自動車、小型車、高級車含め、洗車を長期間していないクルマを除き、ホイールが真っ黒になっているクルマはめったに見ることはない。
この差はなんなのか? ブレーキパッドに違いがありそうなのはわかるが、具体的に何が違うのか、改めてモータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ディクセル、ヤナセオートシステムズ、TOYOTA、Adobe Stock
■制動力バツグンの欧州車!! しかしブレーキダストが……
最近はクルマの保安基準も国際化が進んで、日本車と輸入車の仕様の違いは随分と減った。
日本車の国内仕様は相変わらず右側にウインカーレバー、輸入車の右ハンドル車は左側にウインカーレバーがあるが、灯火類(それでも日本は左側通行なので配光も英国と同じで少数派だ)なども共通化されつつあり、開発コストの圧縮だけでなく輸入国での登録作業が簡素化されてきた。
それでもいまだに残る欧州車と日本車の違いのひとつにブレーキダストの多さがある。これは主にブレーキパッドの摩擦材においてダストを減らす工夫をしているか否かということが違いだが、それはなぜなのか? 21世紀の現代社会にあって、ブレーキダストにまみれたホイールを見るたびに首をひねってしまう。
日本車はパッドだけを減らすようにしてディスクローターはあまり減らないようにしている。これは経済的には有利で日本のユーザーが喜ぶことも配慮している。そしてディスクローターの薄肉軽量化にも貢献しているようだ。
それに対して欧州車はブレーキパッドの交換2回でディスクローターも交換するのが通例となっている。欧州車は汚れないことやメンテナンスコストよりも、ブレーキの絶対的な制動力とそのフィーリングにこだわっているからだ。
アウトバーンなどの超高速域からのフルブレーキングで瞬時に制動力が立ち上がるだけでなく、繊細な減速力の調整ができるよう、ブレーキ各部の剛性と足回りの剛性をしっかりと確保している。
例えばBMWは通常モデルではスライディングキャリパーを使い続けているが、剛性の高さから絶対的な利きやコントロール性なども抜群で、運転していて安心感を与えてくれる。
日本車は経済性やメンテナンスフリー、そしてブレーキ鳴きを抑えるためにローターを減らさずにブレーキパッドを柔らかめにして、初期制動力の立ち上がりを大きくしてブレーキがよく効く印象を与えるような仕様も少なくない。
これは近所の買い物に使うなら問題はないが、ブレーキへの踏力に対する応答性が鈍く、ある程度からは踏力に反応することなくABSが作動してしまう。
そんなクルマを街中で使っているせいで、ほとんどのドライバーは急制動を行なうことができなくなっている。コロナ禍以前に行ってきた安全運転講習会でインストラクターを何年も務めてきたが、9割以上のドライバーはいきなりの急制動に体が反応できなくなっていた。
コメント
コメントの使い方筆者が欧州車を崇拝しているというのはよくわかった
ブレーキの性能上げた所でタイヤがまともじゃなければ意味が無い。
スリップサインぎりぎりとか古いヒビ割れだらけのタイヤを履いている車なんてかなり多くエアー不足なんて辺り前ですからね。