■補償はたった180万円という冷淡な評価額
つまりホンダカーズ野崎の言い分としては製品が販売される前に全損(=商品としての価値がなくなった)状態になったわけだから、本来であれば販売価格が全額補償されるべきというもの。これについては道理が通っている。
「保険会社は時価額が180万円という評価をしてきました。弊社は450万円で売っている商品を納車前に全損されたのに、約270万円も自腹を切れと言っているのと同じです。過失がまったくない状況でなぜ被害者が損をしないといけないのでしょうか。当然ながら全額補償されるべきです」。
松本店長の声には怒りがにじみ出ていた。仮に時価額が180万円だったとして、当然ながら全損したクルマにオーナーが代金を払うことはない。そして被害に遭ったタイプRを売却しても最終的に450万円になることはあり得ない。
自動車ディーラーゆえ、キッチリと書類などで販売価格などを証明することはできるのも保険会社とて充分に理解しているはずだ。このような対応を取ってくるというのは明らかに被害者を軽視したものだろう。
「このようなケースだと被害者が泣き寝入りすることも少なからずあります。もちろん弊社としても販売価格全額を補償してもらうまで戦いますし、今後こんな被害者が損をすることがないように、判例を作る気持ちで戦いますよ」。
今回は納車前のクルマというケースだったが、昨今は旧車や90年代のクルマだと、たとえ購入額が高額でも時価額は数十万円と査定されたり、保険会社自身が損をしないように仕向けるケースも少なからずある。
もちろん保険会社とて営利企業であり、なんでもかんでも支払うわけにはいかないのは分かる。ただクルマという「財産」を奪われた被害者が損をするのは明らかに間違っている。今後の展開を見守りたい。
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