登場した時はそれほど注目されていなかったのに、時が経って改めてじっくりと味わってみたら「思ったよりもいいクルマだったじゃない!」というクルマって、実は意外とある。
ここでは、そんな「今、あえて再評価したいクルマ」を取り上げ、その魅力を改めて確認してみたい。
※本稿は2022年9月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年10月10日号
■渡辺陽一郎が注目度急上昇の4台を再評価
今はフルモデルチェンジの周期が以前よりも長く、6年から10年近くに達する。
そうなると発売後の改良が大切だ。また今後は電気自動車が増えることもあり、取り扱い車種の見直しも行われている。
新規投入や廃止により、各カテゴリーの競争関係や勢力争いにも変化が生じた。改良とライバル車の廃止が重なれば、販売合戦で有利になる。
この市場の変化も踏まえて「再評価したいクルマ」を4車種取り上げたい。
改めてこの4車種に試乗すると、すべてに当てはまる共通点があった。それは時間の経過に伴って、各車種の持ち味が、以前よりも濃厚に感じられたことだ。
最もわかりやすいのは、コンパクトSUVのレクサスUXであった。
以前の運転感覚は、共通のプラットフォームを使うC-HRに近く、レクサスの高級感が希薄に感じた。
それが発売後の改良で、粗さの伴う乗り心地が改善され、振動も抑えた。
軽快な運転感覚を生かしながら、プレミアムブランドの「レクサスらしさ」を身に付けている。
日産のコンパクトSUV、キックスにも似たところがある。実用指向とあって、サイズのわりに荷室は広いが、発売時点では洗練度が低かった。
SUVではカッコよさや運転の楽しさも大切だから、キックスは売れ行きも伸び悩んだ。
しかし改良を受けた今は、内装を洗練させて、e-POWERの動力性能も高めた。以前とは違う「SUVらしさ」を味わえる。
時間の経過に伴う市場の変化では、セダンも注目される。今では不人気のカテゴリーとされ、車種も大幅に減った。そこでカムリ(トヨタ)を取り上げる。
現行型の発売は2017年で、当時はサイズや価格帯の近いトヨタマークX、日産ティアナ、スバルレガシィB4などが存在していたが、今はすべて廃止されている。
クラウンまで、一時的だが姿を消した。その結果、センチュリーを除くと、カムリがトヨタブランドの最上級セダンになる。
セダンの市場が激しく変化するなかで、改めてカムリに試乗すると、長期出張を終えて自宅に戻った時のような安心感に包まれた。
ほかの3車種に比べて雰囲気が地味で、走りの楽しさや個性は乏しいが、運転感覚が馴染みやすくリラックスできる。上級グレードともなれば内装も上質だ。
今のように背の高い軽自動車やミニバンが普及する前は、セダンが実用的なクルマといわれ、ファミリーカーとして後席に乗車する機会も多かった。
カムリにはよい意味で昭和のセダンの面影が残る。誰でも安心して快適に使える「トヨタらしさ」がカムリの持ち味だ。
シビック(ホンダ)は今年で生誕50周年を迎える。
1972年に発売された初代シビックは、全長が3405mm、全幅は1505mmだから今の軽自動車並みに小さい。現行型は格段に大型化されたが、本質的には変わっていない面もある。
それは優れた環境性能と、運転の楽しさの両立だ。
初代シビックは、1973年に希薄燃焼方式のCVCCを追加して、日本と北米の厳しい排ガス規制を後処理装置を使わずにクリアした。1974年にはツインキャブレターを装着するスポーティなRSも加えた。
この開発姿勢は、現行シビックのe:HEVと優れた足まわりの組み合わせ、あるいはタイプRにも通じる。現行型も初代シビックの特徴を受け継ぎ「ホンダらしさ」を実感させる。
今回の4車種は、販売面では脇役的な存在だが、改めて試乗すると、メーカーやカテゴリーが備える「らしさ」を濃厚に感じた。
読者の皆さんが新車を選ぶ時も、例えばカローラクロスが本命なら、試しにキックスにも試乗してみるといいだろう。
新しい発見があり、後悔しないクルマ選びを楽しめると思う。
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