「最後の国産6気筒ターボMTスポーツ」はどっちを選ぶべきか! 新型フェアレディZ対GRスープラRZ

■運転をとことん楽しめるZ

スープラよりもハイパワーなエンジンが搭載されているZだが、数値的にはスープラのほうが上回っているようだ。しかしZの魅力はパワーよりフィーリングにある
スープラよりもハイパワーなエンジンが搭載されているZだが、数値的にはスープラのほうが上回っているようだ。しかしZの魅力はパワーよりフィーリングにある

 そんなスープラよりもさらにハイパワーなエンジンが搭載されているZですが、外誌のテストなどをみるに、0〜100km/hやゼロヨンといった加速性能は、わずかにスープラのほうが上回っています。

 でも、そもそも数値的性能にこだわらず、運転行為そのものの楽しさを最大化するというのがZのコンセプトですから、これで一喜一憂するのはあまり意味がありません。

 むしろ気になるのはパワーよりもそのフィーリングです。Zに搭載されるVR30DDTTは過給の逆流を封じるリサーキュレーションバルブやフライホイールの振動低減など、滑らかに回りサクサクと応答する工夫が随所に施されています。

 その甲斐あって、同系のエンジンを積むスカイライン400Rよりもシャープさは一枚上手。そして7000rpmのレッドゾーン手前までパワーのタレを感じさせないスポーティなフィーリングを得ています。

■エンジンはスープラに軍配か

BMW製ストレート6を搭載するだけに、スープラのエンジンは極上。あとはMTの使い心地だが、元となったBMWのMTが独特なだけに、ちょっと気がかり……
BMW製ストレート6を搭載するだけに、スープラのエンジンは極上。あとはMTの使い心地だが、元となったBMWのMTが独特なだけに、ちょっと気がかり……

 が、スープラが搭載するB58のレスポンスとサウンドはやっぱり一枚上手。伝家の宝刀、BMW製ストレート6とはなんたるかを存分に感じさせてくれます。特に1回目のマイチェンでは排気系を一新し、マニホールドが別体化されたこともあってか、パワーもともあれ回りにキレのよさが加わりました。

 対するZはスカイライン400Rで培われた市井のチューニングノウハウが活用されることも期待されますが、ストック同士で比べるならエンジン勝負はスープラに軍配が上がるかと思います。

 ミッションはスープラのMT車に触っていない段階で評価はできませんが、ZのMTについては、先代に比べるとあらゆるバリが取れたかのように動きがスムーズで、ゲートへの吸い込み感とギアを入れた節度感とのバランスも綺麗に保たれています。スポーツカーとしてみても満足できるタッチに仕上がっているのではないでしょうか。

 一方、スープラの側はM3系のギアボックスに3シリーズのハウジングを組み合わせたオリジナルのユニットを用意したようですが、元ネタのBMWのMTのフィーリングがちょっと独特なだけに、その仕上がりは気になります。

■フットワークはZが有利

各所の試乗レポートでは新型Zの新設計9速ATがかなり好評。「MTではなく9速ATを選ぶのもありかなと思わせる仕上がり」と筆者の渡辺氏
各所の試乗レポートでは新型Zの新設計9速ATがかなり好評。「MTではなく9速ATを選ぶのもありかなと思わせる仕上がり」と筆者の渡辺氏

 ATはスープラが定評と実績のあるZF製8HPを採用。Zは新設計の9速ATで、北米仕様のフロンティアやタイタンに用いられるギアボックスをベースに、ハウジングをマグネシウム製として軽量化を図りました。

 トルク容量は公表されていませんが、彼の地では5.6LのV8を積むトラックに組み合わせられていることもあり、475NmのZには充分以上であることは間違いないでしょう。変速レスポンスや繋がりのダイレクト感にも不満はなく、あえてMTではなくこっちを選ぶのもありかなと思わせる仕上がりです。

 2回目のマイチェンを受けたスープラは、スタビブッシュや電子制御ダンパーのチューニング変更に加えて、新デザインの鍛造アルミホイールを採用し、本あたり1.2kgの軽量化を果たしたそうです。

 このバネ下の軽さが何より平時の乗り心地向上には活きてくるはずで、発売当初とは印象を違えた優しい乗り味になっていることは想像できます。

 が、新しいZのフットワークのよさは、そんなスープラをも霞ませてしまうかもしれません。

 公道的なギャップやアンジュレーションをものともせず、アシをしなやかに動かして400ps超級のパワーを見事に吸収。ロールやピッチなど上屋の動きは無理に規制せず、ドライバーの些細な入力にも応じて所作を刻々と変えていくサマはまさに言い得て妙のダンスパートナーです。

 さもすればサーキット的環境ではちょっと緩い印象かもしれませんが、土台にはZ34世代で培ったノウハウがありますから、スポーティ方向のニーズに応えるパーツが今後たくさん出てくることは想像に難くありません。

 ストックの懐深さ、そしてイジる楽しみという点でも、シャシーの芸域が広いのはZの側かなという気がします。

次ページは : ■納期遅延を逆手にとる「スープラを堪能してからのZ」もアリ!?

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