課題は受電装置とインフラ整備、安全対策
駐車場でのワイヤレス充電は、今後実用化され徐々に普及すると思われますが、走行中ワイヤレス充電の実用化については、まだまだ克服しなければならない難題がたくさんあります。
技術的な課題としては、短時間に大きな電力を給電できる給電能力のアップや、充電時に周囲に与える電波障害の回避、トラックなどに踏まれても壊れないだけの強度、などがあります。なかでもハードルの高い課題としては、クルマ側に受電装置を搭載しなければいけないこと(現時点ではサイズが大きい)や、道路側に充電装置を埋め込むインフラの整備、街中で大電力を送電する際の安全性対策、などです。
BEVの床下は、通常大量のバッテリーを敷き詰めているのでスペースに余裕はなく、ここに最低地上高を確保しながらそれなりのサイズの受電装置を搭載するとなると、クルマの基本設計を一から考え直さなければいけません(いきなり大容量バッテリーをなくすわけにはいかない)。無理やり搭載するとなると、フロア構造を2段にしたり、BEVでせっかく無くしたセンタートンネルの膨らみが再び復活するなど、大変です。また、路面に給電装置を埋めるという大掛かりなインフラ整備が必要になり、時間も費用もかかるので、最初は限定的、段階的な対応になると思われます。
また、走行中にワイヤレス充電するとなると、急速充電並みの100kW~200kW程度の大電力を街中、道路上で送電することになります。となれば、送電装置と受電装置の間に金属が入ると発火する可能性があり、間に動物や人間が入り込む可能性も否定できないので、安全対策は重要です。
実用化まではまだ遠い
日本では、自動車メーカーや電機系メーカー、大学など産学共同で、研究所やキャンパス内に試験コースを使って、走行中ワイヤレス充電の技術開発を進めている段階ですが、海外ではもう少し積極的に進めています。すでに、欧州各国では一般道路を使った実証試験の準備を進めており、イギリスや韓国では実際の道路でBEV専用レーンを設けて実証試験を始めています。
走行中ワイヤレス充電が注目されているのは、BEVのためだけではありません。自動運転にとっても、必須の技術であり、大きな役割を担います。自動運転なのに、充電はドライバーがケーブルを接続して行うのでは、とても自動運転とはいえず、完全な自動運転のためには、バッテリー切れの不安がない走行中ワイヤレス充電が不可欠なのです。
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走行中ワイヤレス充電は、本格的な電動化時代と自動運転時代の到来のために必須の技術であり、実用化されれば電動化と自動運転の世界が大きく前進すると思われます。
しかし、道路に給電装置を埋め込むというインフラ整備がそう簡単にできるとは思えません。最初は、決められたコースを走るバスやトラック、例えば空港内で人や荷物を運ぶバスへの適用などから実用化されるのではないでしょうか。私たちが乗る電気自動車が走行中ワイヤレス充電できるのは、早くとも2030年以降になりそうです。
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コメント
コメントの使い方幹線のみであっても桁違いの面積をもつ道路全体に施工って・・・どれだけ環境負荷を増やす気ですか。
道路にアスファルトが使われている主な理由は、他でも代替できるけど、圧倒的に安いから。安い理由は残り物として出るから。つまりゴミの有効活用。
それにわざわざレアアース埋め込んで劣化抑える工夫もして常時点検と管理もして…BEVが本当に地球の為の選択肢なのなら絶対ありえない話。