ノア、N-BOX、86、ハスラー… 先代と外見瓜二つの「静かな変革」 キープコンセプトの是々非々

■スズキ ハスラー

 全高が1600mmを上まわる軽自動車だが、外観をSUV風に仕上げ、荷室には水洗いの可能な処理も施した。

 2014年に発売された先代型は、実用的な背の高い軽自動車とSUVという、2つの人気カテゴリーを融合させて人気車になった。2020年にタフトが登場するまでライバル車が実質不在。好調な売れゆきを保った。

スズキ ハスラー。ライバルのタフトが現われたが好調な売れゆきを見せる現行型。ナイスキープである
スズキ ハスラー。ライバルのタフトが現われたが好調な売れゆきを見せる現行型。ナイスキープである

 外観が個性的だから古さも感じなかったが、安全装備や燃費性能は進化させねばならない。そこで2020年1月に現行型を発売した。丸型ヘッドランプと直線基調のボディ、高めのルーフに特徴があるから、現行型の変化の度合いは小さい。

 それでもボディ側面のウィンドウを3分割するなど質感を高めた。運転支援機能の採用も含めて、従来型のユーザーが新型に乗り換えたくなる要素が豊富だ。(TEXT/渡辺陽一郎)

●スズキ 先代ハスラー 年別月販平均台数
・2014年:8686台
・2015年:7963台
・2016年:7147台
・2017年:6050台
・2018年:5441台
・2019年:4820台

●スズキ 現行ハスラー 年別月販平均台数
・2020年:6676台
・2021年:6874台
・2022年:5673台

結論…「ナイスキープ」!!

■トヨタ パッソ

 全高が3700mm以下のコンパクトカーで、外観に丸みを持たせ、柔和で運転のしやすい雰囲気がある。サイドウィンドウの下端を低く抑えて視界も抜群にいいが、操舵感は曖昧で走行安定性も不満だ。乗り心地には粗さが伴う。クルマとしての基本性能が低い。

 現行パッソは、コンセプトと併せて、先代型の欠点まで受け継いだ。「街中で乗るクルマだから、価格が安ければ、走りはこんなモンでいいでしょう」という割り切りがあり、それはユーザーにも伝わる。したがって販売も下降気味だ。

現行型トヨタ パッソ
現行型トヨタ パッソ

結論…ざんねん!!! 失敗です!!

■マツダ CX-5

 大ヒットした初代CX-5と似たデザインだが、一段とスポーティなルックスに生まれ変わり、インテリアの質感も座り心地もよくなった。また、きめ細かい改良と熟成によってディーゼルターボも耐久信頼性を高めている。サスペンションも巧みに練り込むなど、その進化は大きい。

 リアシートも座り心地がよくなり、荷室も積載能力を高めている。商品性向上が功を奏してか、デビューから6年を経っても販売は落ち込んでいない。真価が問われるのは次に出る3代目だろう。

現行型マツダ CX-5
現行型マツダ CX-5

結論…ナイスキープ!!

■まとめ

 先代モデルの人気が高い場合、基本的にはキープコンセプトをメーカーは選択するし、ユーザーもキープコンセプトを求めるということがわかる。軽自動車市場は比較的変化を求める人が少ないためキープコンセプトが多い傾向があるようだ。

 SUVブームのなかで、クラウンですら大胆な方向転換を決めた。今後フルモデルチェンジが予想されるプリウスなどの人気車種は果たしてキープコンセプトするのか、それともコンセプトチェンジを行うのか。メーカーそして開発者の手腕が問われる。

キープコンセプトで大ヒットした新型フェアレディZ。中身がしっかり進化することがキープコンセプト成功の秘訣だ
キープコンセプトで大ヒットした新型フェアレディZ。中身がしっかり進化することがキープコンセプト成功の秘訣だ

【番外コラム01】キープコンセプトなクラウン

 9月1日に発売された新型クラウンは先代から大きく変化した。クラウン初のFF化、クロスオーバーやスポーツ、セダン、SUVと4つのボディタイプを揃えるなど、クラウン史上最大の変化と言ってよい。

 しかし、変革と挑戦こそがクラウンであると考えると、これも「キープコンセプト」と言えるのではないか。豊田章男社長が初試乗後に「これ、クラウンだね」と言ったように、新型クラウンは大きく変化してもクラウンらしさをみごとに受け継いでいるようで、魂はキープコンセプトと言えるだろう。(TEXT/編集部)

次ページは : 【番外コラム02】大幅コンセプトチェンジで成功したクルマ・失敗したクルマ

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