2ペダルATが主流の今の世の中。それでもあえて3ペダルMTを選んで乗りたいクルマがある。その理由は? そして魅力はどこにある?
そこで今回は「今あえて乗りたい3ペダルMT」と題して3名の自動車評論家が王道のスポーツカーから商用車(!?)まで、バラエティ豊かなモデルたちを3台ずつチョイス。最新の3ペダルMTによる濃厚なカーライフを楽しみたい方、今がチャンス!!
トヨタの「EV用3ペダルMT開発」の情報も掲載!
※本稿は2022年9月のものです
文/鈴木直也、国沢光宏、斎藤聡、高根英幸、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年10月26日号
■8速、9速当たり前のAT車。それでもなお3ペダルMTで乗りたいクルマがある
今やスポーツモデルだって2ペダルが主流派だ。
ひと昔……、どころではないな。ふた昔以上前だったら、2ペダルATは変速タイミングやトルコンスリップなどに起因するダイレクト感のなさなどが嫌われ、クルマの運転そのものを楽しむには、「やっぱり3ペダルMTだよね!」という声が大きかった。
特にCVTはエンジン回転の上昇と車速の高まりがリンクしない制御が多く、アクセルをグイと踏み込むと、エンジン回転が一気に上昇し、エンジン回転が一定のままCVTのギア比が高まり車速が伸びていくという感覚になじめない、なんてこともあった。
でも、今のクルマはどうよ? 有段ATは多段化が進み、6速ではもう古い、なんて言われるほど。8速、9速は当たり前。レクサスLS、LCなどには10速ATも搭載されている。
これに対し3ペダルMTは、ポルシェには7速MTがあるけれど一般的には6速が最多段。エンジンの「おいしい回転域」を引き出して走る、ということだけを考えれば、より細かいギア比の設定ができる多段ATのほうが効率がいいのは言うまでもない。
ダイレクト感が希薄と言われたのも今は昔。現代の多段ATは各ギア段でロックアップ機構が作動し、変速時以外はメカニカルに、ダイレクトにエンジン動力が駆動輪に伝わっている。
シフトタイムラグでも3ペダルMTは2ペダルATにはかなわない。電制技術が進化した現代、「アクセルペダルを緩める→クラッチペダルを踏む→シフトレバーを操作する→クラッチペダルを戻す→アクセルペダルを踏み込む」なんて動作をするMTは、スムーズなギアシフトを自動的にやってくれる2ペダルにかなうわけがないのだ。シフトダウンの場合、3ペダルMTだと、さらにエンジン回転を合わせる、という作業も加わる。
つまり、現代において3ペダルMTが2ペダルATに勝っている点は、効率に限っていえば、ほぼ存在しない。速さを競うF1だって2ペダルになって久しいし、R35GT-R(日産)だって2ペダルDCTのみの設定だ。
しかし、それでもなお、3ペダルMTで乗りたいクルマがある。クラッチペダルを踏み、シフトレバーを操作して走らせたいクルマがある。
エンジンの鼓動をダイレクトに掌に感じ、ギアをドライバーの意思で選ぶ。時にはクラッチワークとの連携が上手くいかず、ギクシャクしてしまうこともあるだろうが、思いどおりに走らせられた時の気持ちよさは、やはり格別だ。
効率だけを語れば、3ペダルMTはもはや遠い存在なのかもしれない。だがクルマにロマンを求めるならば、3ペダルMTはやはり圧倒的な強さと楽しさを語りだしてくれるのだ。(TEXT/編集部)
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