日産 サクラ大ヒット! 軽自動車は「EV」で革命を起こすのか?

EV補助金の交付金額もサクラの販売を後押し! 「小さな高級車」も味わえる魅力あり!!

 ちなみにかつての三菱アイミーブも軽自動車サイズの電気自動車だったが、発売当初はリースのみであった。その後、2010年から一般ユーザーにも販売したが、価格は398万円で、経済産業省の補助金(114万円/2010年度)を差し引いても284万円であった。軽自動車では価格が高かった。

 ほぼ同時期に発売された初代(先代)リーフXは、価格が376万4250円で、補助金は78万円が交付された。この金額を差し引くと298万4250円だ。アイミーブは軽自動車なのに284万円だから、3ナンバー車の初代リーフに比べると割高感が生じて、売れ行きも低迷した。

 その点でサクラは価格が安い。中級グレードのXは239万9100円で、経済産業省の補助金が55万円(2022年度)だから、交付を受けられると実質184万9100円に収まる。前述のアイミーブに比べて約100万円安く手に入る。

 この金額は、日産ルークスハイウェイスターGターボの184万9100円と同額だ。つまり補助金の交付を受けると、電気自動車のサクラを、一般的な軽自動車の上級モデルと同程度の予算で購入できる。

 さらに東京都は経済産業省とは別に45万円の補助金も用意しており、これも加えると総額100万円が交付される。サクラXの価格は239万9100円だから、100万円が交付されると139万9100円だ。この金額はルークスで最も安価なSよりも安い。

 現行リーフX・Vセレクションは、価格が394万6800円で、経済産業省による補助金が78万6000円(2022年度)交付される。これを差し引くと316万800円だから、サクラXは130万円以上安い。この補助金を含めた実質価格の求めやすさも、サクラの販売が好調な理由だ。

 このほかサクラは電気自動車だから、加速が滑らかでノイズも小さい。モーターの最大トルクは195Nm(19.9kg-m)で、軽自動車が搭載するターボエンジンの約2倍に達する。走りが滑らかで動力性能に余裕があることもサクラの魅力だ。

 さらにサクラのフロントマスクは、上級電気自動車のアリアに似ている。プラットフォームはデイズと基本的に同じだが、ボディは異なり、電気自動車らしさを際立たせた。内装も上質で、インパネはファブリック調に仕上げている。

 後席の座り心地はデイズよりも柔軟で「小さな高級車」という雰囲気も漂う。高機能なスマートフォンのような凝縮感もあり「優れたツールを使っている」満足感を味わえる。

 いっぽう、三菱eKクロスEVは、サクラと基本部分を共通化した姉妹車だが、「電気自動車であること」は強調されていない。「三菱eKシリーズ」としてのSUVらしさを重視する。そのために内外装も、一部を除くとeKクロスと共通だ。

 eKクロスEVがeKクロスと内外装を共通化した背景には、販売台数もある。日産の販売店は全国に約2100箇所を展開するが、三菱は約550店舗だから日産の26%だ。そうなると販売台数も限られる。eKクロスEVが、サクラのように内外装を独自のデザインに仕上げるのは、コストの面から難しい。そこでeKクロスEVの内外装をeKクロスと共通化した事情もある。

サクラ受注停止中!! 三菱は補助金対策あり? 気になる販売状況と納期

SUVテイストの軽自動車であるekクロスシリーズのEVモデルとして登場した三菱eKクロスEV。三菱車のアイコンであるダイナミックシールドの採用で人気を得ている
SUVテイストの軽自動車であるekクロスシリーズのEVモデルとして登場した三菱eKクロスEV。三菱車のアイコンであるダイナミックシールドの採用で人気を得ている

 サクラとeKクロスEVの運転感覚は基本的に同じだが、電気自動車らしさや上質感を重視すると、一般的にはサクラが魅力的だろう。そこに店舗数の違いも加わり、2022年7~9月におけるサクラの届け出台数は1か月平均で約3700台、eKクロスEVは700台少々に留まった。

 それでも三菱の販売店では「三菱車のセカンドカーとして使われるお客様には、(今の三菱車に共通する)ダイナミックシールドのフロントマスクが人気を得ている」という。これも納得できる話だ。自宅の車庫にアウトランダーやデリカD:5と並べて駐車するなら、サクラよりもeKクロスEVのフロントマスクがピッタリだ。サクラは電気自動車の個性、eKクロスEVは三菱車の持ち味を重視する。

 そして両車では納期も異なる。日産の販売店では「サクラは納期が約1年に達したから、受注を一時的に停止した」という。三菱では「eKクロスEVの納期は約半年で、今のところ受注は止まっていない」と述べた。納期を重視するなら、eKクロスEV。

 さらに三菱の販売店では、補助金に関する話も聞けた。「経済産業省の補助金は、(2022年)11月上旬には予算を使い切って終了すると見られている。今年度の補助金に間に合わなかった場合は次年度に申請するが、交付を受けるには、新車登録日(軽自動車は新車届け出日)の翌々月の末日までに申請書を提出せねばならない。

 このときに補助金を受け付けていないと交付を受けられないから、お客様が希望すれば車両を預かり、登録を遅らせる。それにより次年度の補助金を受け取られるように配慮している」。

 新車を預かるといっても、長期間にわたって保管するにはコストを要する。補助金の交付は、ユーザーや販売店にとってメリットになるが、そのために困惑したりコストを費やしている面もあるわけだ。補助金に予算があるのは分かるが、予め締め切りを決めて、それまでに申請された分は漏れなく交付すべきだ。そうしないとユーザーや販売店が困惑したり、コストを費やすことになってしまう。

 それが無理なら、次年度の補助金を今年度まで遡って申請可能にするなど、「補助金を受け取れない期間」が生じないように配慮して欲しい。岸田文雄首相も、同様の方針を示したと報道されている。サクラやeKクロスEVを安心して購入できるようになれば、軽自動車サイズの電気自動車が、新たなカテゴリーとして人気を高める可能性も高い。

 日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住んでいて、自宅に充電設備を設置しにくい。残りの60%は一戸建てに住むが、複数の小型/普通車を所有するには、広い駐車スペースと高い維持費が必要だ。そのために軽自動車を併用するユーザーが多く、サクラやeKクロスEVは、そこにしっかりと食い込んでいる。

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