2030年度の物流需給ギャップ
また、資料では2025年度と2030年度におけるトラック輸送の物流需給ギャップについても試算している。物流需給ギャップとは、物流における需要(貨物の量)と供給(トラック輸送力)の差のことだ。
需給ギャップは、両年度の輸送トン数の将来値(予測値)と、不足するドライバー数に一人当たりの年間輸送トン数を掛けた値を比較することで推計した。なお、国内の貨物輸送量の将来値は、主要シンクタンクが公表している実質GDPの予測値から推計したものだ。
トラックドライバーの需要量(貨物を運ぶのに必要なドライバーの人数)の予測はやや複雑だが、国交省の調査で「人手不足感のDI」がゼロ付近となった(=需給が均衡していた)2003年度の輸送量(約33億トン)とドライバー数(約107万人)から、貨物1000トン当たりのドライバーの需要を0.324人と算出した。
総労働時間が2003年より12.5%短くなっていることを想定すると、必要なドライバー数は0.370人/千トンとなる。ここに先のトラック輸送量の予測値を掛けることで将来のドライバー需要が求められる。
いっぽう、トラックドライバーの供給量は、経済センサス(経産省)の「道路貨物運送業」等から、人口予測などに使われるコーホート法を用いて推計した。
これにより、2025年度のドライバー需要は115万7763人、同供給量は101万2147人となり、14万5616人のドライバー不足となった。2030年度には需要量118万4393人に対して供給量は97万0307人で、不足するドライバー数は21万4086人に拡大するという予測結果になった。
ここに調査の元データが異なることによる調整を実施し、最終的に不足するドライバーの数は、2025年度に11万0809人、2030年度に16万2912人となった。
ドライバー1人当たりの輸送量と不足するドライバー数から、物流需給ギャップは、2025年度に3.7億トン(13.4%)、2030年度に5.4億トン(19.5%)となる。これは人手不足(のみ)による需給ギャップだ。
先述の通り、労働時間の短縮(2024年問題)による需給ギャップが4.0億トン(14.2%)なので、これと合計すると2030年度に最大で9.4億トンもの貨物がトラックで運べなくなる可能性がある。これは率にすると貨物総輸送量の34.1%に相当する。
国内の貨物の3分の1以上が運べないという危機を目前に控えた今、トラック業界だけでなく一般消費者や荷主企業も、物流において自らが果たすべき役割を考えなおす必要があるのではないだろうか。
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