タイヤで発生する渦を空気のカーテンで整流してブロック
エアカーテンは、フロントエプロンの左右両端に設置されたエアインテークから取り込まれた空気を、フロントインナーフェンダーのスリットに導き、ホイールアーチへ放出する手法です。この空気の流れによって、フロントホイールの側面をカーテンのようにブロックして流れを整流、タイヤで発生する乱れを抑えて空気抵抗を低減させます。
同様の効果は後輪タイヤでも発生するので、クルマの後輪側にもエアカーテンと同じ機能を持たせたものもあります。「レクサスLC」やホンダ「クラリティPHEV」では、ロッカーサイドグリルを設定して、ボディ側面を通過する気流をリアのタイヤアーチへ放出して、乱れを抑えています。
空気抵抗が低減できれば、高速走行での燃費と走行性能の向上につながります。具体的な燃費向上効果は明らかではありませんが、通常の走行では1%に満たないと推察されるものの、空気抵抗は車速の2乗に比例して大きくなるので、高速巡行では明確な燃費向上が期待できます。
燃費向上だけでなく、走行安定性のためにも採用が加速
また、車体表面の渦は周期的に発生し、不規則に車体を揺するので、渦を抑制できれば走行安定性や旋回性能を改善する効果があります。日産の新型「セレナ」では、エアカーテンによって、横風等によるふらつきを抑えて、先代と比べてヨーモーメントが20%低減できたとしています。
エアカーテンを最初に採用したクルマは定かではありませんが、2012年頃にはBMWが採用しており、このあたりが最初の採用ではないでしょうか。
以降、高速走行の頻度の高い欧州車は、空力性能向上の有効な手段のひとつとして、ほとんどのメーカーが高性能モデルに限らず、大衆車の一部でも採用しています。BEVについても、アウディの「e-tronモデルS」が、エアカーテンを採用してCd値0.26を実現したことが話題になりました。また米国では、フォードのピックアップトラック「F-150」も採用しており、欧米ではエアカーテンがBEVやトラックまで広く普及しているのが分かります。
日本では、欧州よりやや遅れて、数年ほど前から採用が始まりました。代表的なところでは、ホンダの高性能モデル5代目「シビック・タイプR」、コンパクトSUVの「ヴェゼル」、FCV「クラリティ・FUEL CELLおよびPHEV」。トヨタでは、フラグシップクーペ「レクサスLC」、スポーツモデル「GRスープラ」、レーシングマシン「TOYOTA GAZOO Racing TS050ハイブリッド」、日産ではコンパクトミニバンの新型「セレナ」、スポーツモデルの新型「フェアレディZ」、コンパクトカー「ノート/ノートオーラ」、クロスオーバーBEV「アリア」、そしてマツダでは「CX-30」と、高性能モデルからSUV、ミニバン、コンパクトカー、BEVとすべてのジャンルのクルマに採用されています。
これだけエアカーテンの採用が加速している理由は、燃費向上だけでなく、走行安定性や旋回性能の向上にも有効だからだと考えます。今後も、さらにデザインとバランスさせながら普及するのではないでしょうか。
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エアカーテン自体の効果は、決して大きくはありませんが、「チリも積もれば」で、他のエアロ技術と組み合わせるなどして、少しずつ成果を積み上げていくことになるでしょう。今後、エンジン車からBEVへとシフトしていくと、空力性能の寄与度がさらに高まるため、空力性能が電費向上や性能向上の切り札になる可能性も。次はどんな空力改善アイテムが登場するのか、今後も非常に楽しみです。
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