■e-POWERが売れに売れた理由を考える
一方、内外装はあまり大きな変更はなく、相変わらずの薄味だった。一番変わったのはフロントマスクで、太いメッキのVモーショングリルが付けられたが、センスのよさは感じられなかった。
ガッカリなのは内装、特にダッシュボードまわりだった。相変わらず安っぽい樹脂製ダッシュボードのセンター部に、ピアノブラックのパネルが鎮座していた。ピアノブラックは高級感を出そうという狙いなのだろうが、あまりにも浮いていてセンスがない。ガソリンエンジン時代は、クルマそのものが地味な存在ゆえ、あまり気にならなかったが、e-POWERという新世代のパワートレーンを手に入れた途端、猛烈に気になり始めた。
このように、ノートe-POWERの第一印象は、「ドライブ感覚は超新鮮だが、マニアックすぎて一般受けは疑問」「内外装は相変わらずサエない」というものになった。よって、「販売の起爆剤にはならないだろう」という結論が導かれた。
ところが、私の予想に反して、ノートe-POWERは大ヒットしたのである。発売3週間後には、月間販売目標の約2倍にあたる2万348台を受注。全体の78%がe-POWER車だった。2016年11月の国内販売台数は1万5784台となり、軽を含む全銘柄の販売台数で1位に輝いた。日産車が月間販売台数で1位になったのは、6代目サニー以来、30年ぶりの快挙だった。
内外装はあまり変わっていなかったから、ヒットの要因はe-POWERによるワンペダルドライブ以外にない。つまり多くのユーザーは、ディーラーで試乗して感激し、契約したのだろう。まさかあの過激なワンペダルセッティングを、一般ドライバーがこんなにも歓迎するとは!
■一般ドライバーが求めていたのは「革命」か!?
たしかにワンペダルドライブは、近所への買い物でも、その新鮮さを強く実感できる。以前のノート・スーパーチャージャーが、ほとんど働く機会がなかったのとは対照的だ。一般ドライバーは大きな変化を求めていないと思い込んでいたが、日常域で感じられる「革命」を歓迎したのだ。
思えば日産は、よくぞここまで思い切ったものだ。当時の日産は、技術面でも経営面でも低迷気味だったが、e-POWERのワンペダルドライブは、世界初の量産EV「リーフ」の知見を遺憾なく活かした攻めのセッティング。これに、ディープなカーマニアから一般ユーザーまでが心を動かされた。
その後e-POWERは日産の国内向け看板技術となり、多くのモデルに展開された。2020年の3代目ノートはe-POWER専用モデルになった。
しかし3代目ノートは、アクセルを戻すだけでは停止はできなくなっており、ワンペダルドライブは消滅していた。アクセル全オフの停止時にも、一般的なATのようにクリーピングがあったほうが便利というユーザーの声を汲んだ変更だった。
つまり、それだけ2代目ノートe-POWERのワンペダルドライブが、突出していたのである。現在のe-POWERはどんどんパワーアップし、進化を続けているが、アクセルオフで停止まで可能だったあの”初代”e-POWERが、最もとんがっていたと感じるのは、私だけではないだろう。
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