攻めのモデルチェンジとフェイスリフトと 「4代目プリウス」
2代目から3代目へのモデルチェンジは正常進化だったプリウスだが、2015年登場の4代目では、トライアングルフォルムを維持しつつも、思いきったデザイン変更が行われた。
プラットフォームやサスペンションの変更、パワーユニットの進化などによって低重心化に成功。ただしボディ全高に関しては1490mmと、3代目と同じ数字となっている。
全高こそ同じだが、細部が見直されたことで空力性能もアップし、Cd値はシリーズ最小の0.24に抑えられた。燃費も40.8km/Lと、ついに大台の40km/Lを突破。この数字は10・15モードに変わって採用されるようになったJC08モードでのものだが、JC08は10・15モードより厳しめの数値となるので、4代目の燃費性能が大幅に向上しているのは間違いない。
性能面では向上を果たしたが、デザインは少々“やりすぎた”感があったようだ。アグレッシブな4代目の顔つきに関しては登場直後から賛否両論が巻き起こり、「歌舞伎顔」などと揶揄されることもあった。
トヨタでも否定的意見が多いことを考慮したのか、2018年のマイナーチェンジではフェイスリフトを実行し、4代目のフェイルはマイルドな印象を与えるものに変わった。なお、顔つきが変化しても全体的な空力性能はマイナーチェンジ前と同等だったようだ。
新型プリウスのCd値は公表されるのか? そして気になる燃費は?
そして時は流れ2022年、待望の新型5代目プリウスが発表された。今回のモデルチェンジは初代→2代目以来と言ってよいほど大幅なもので、5代目のコンセプトは「Hybrid Reborn」だった。
5代目プリウスを開発するにあたり、豊田章男社長からは「プリウスはもうタクシー専用でいいんじゃないか?」という提案があったという。しかし開発陣はあくまで乗用車として5代目プリウスを開発することにこだわり、その結果、まったく新しいクルマに生まれ変わった。
完全新規開発とはいえ、5代目プリウスには歴代モデルのイメージも継承されている。ただし全高は下げられてAピラーの角度も鋭いものとなり、さらには大径19インチタイヤの採用によって以前よりもスポーティ感を増している。
本原稿執筆時点で5代目プリウスの燃費性能やCd値は公表されていない。実はCd値に関しては4代目よりも高くなっているという話だ。それでも燃費性能は4代目を上回っているとのことで、ボディデザインの変更によってわずかに増した空気抵抗を他の部分で補っているようだ。
※編集部注
新型プリウスのプロトタイプ試乗会にて編集部員がトヨタの開発者に伺ったところ、新型プリウス(プロトタイプ)のCd値は先代型よりも高く、ボディフォルムによる純粋な空力特性で比べると先代プリウスのほうが上だとのこと。
ボディ形状による空力特性は「ボディトップ(車体の一番高い場所)の位置がどこにあるか」が大きく関係しており、「全高がどれだけ低いか」や「Aピラーがどれだけ寝ていて平べったいか」よりも、「ボディ前面に当たった風をどううまくボディ後方にスムーズに(渦を作らせずに)流すか」が重要となるそう。
先代プリウスは、ボディトップの位置が(新型よりも)ルーフ前方にあり、うまく空気を流す形状になっているそうです。「ではなぜ新型プリウスは(空力特性で考えると不利なのに)あんなにAピラーが寝ていて、あんなに全高を低くしたんですか」と聞いたところ、「だってそのほうがカッコいいじゃないですか」とのお返事。なんと! すげえ!! 超デザインファースト!!!! このズバッとした割り切りを、ベストカーWeb編集部はめちゃくちゃ評価いたします!!!!!
過去のモデルではひたすらCd値の削減に取り組んでできたプリウスだが、ここにきての転換は、今後のハイブリッド車の進むべき道を示しているとも考えられる。また、先にあげたようにクルマの空力性能はCd値のみで決まるものでもない。新たな思想で誕生した5代目プリウスの実力に注目していきたい。
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